(※写真はイメージです/PIXTA)

創業者やオーナー社長、会社の発展に貢献した方がご逝去されると、多くの企業では「社葬」の開催を検討します。一般的な葬儀についてはなんとなくイメージができる方も、会葬の機会が少ない社葬については、詳しくわからないという方がほとんどではないでしょうか。そこで本記事では、社葬の役割や実施の流れ、注意点などについて株式会社ハウスボートクラブの代表取締役社長・赤羽真聡氏が解説していきます。

「社葬」とは?

社葬とは、企業が主体となって故人を追悼する儀式のことです。個人葬の場合は、故人のご冥福を祈るための儀式が中心になりますが、社葬の場合はそれだけにとどまりません。

 

社葬は、会社の発展に貢献した方のご逝去を悼み、新しい会社の姿を社内外に示していく場でもあります。主に、顧客、株主、取引先などに向けて、会社の将来を示す“広報”としての役割も大きな要素です。

 

特に創業者やオーナー社長のご逝去は、会社の歴史においても大きな転換点です。故人に代わって誰が会社を牽引していくのか、どのような体制で企業運営がなされ、変わらず安定した事業が進められるのか。厳粛で格式の高い社葬を執り行うことで、新しい経営陣による新体制で、事業は盤石であることを示すことができます。社葬は、関係各所に安心感を与え、良好な関係を継続する機会にもなるのです。

社葬には3種類ある…それぞれの特徴は?

社葬には、大きく3つの種類があります。どの種類にするのかは、故人や遺族の意向、会社の考えを反映し、決定します。

 

1.社葬

会社が運営の主体となって執り行う葬儀・告別式のことを狭義で「社葬」といいます。多くの場合、遺族により密葬が行われ、荼毘に付されたあと、本葬として社葬が行われます。社葬は、宗教者を招いておこなう場合と無宗教形式でおこなう場合があり、おおむね密葬から40日前後、四十九日の法要の前におこなわれるのが一般的です。

 

密葬は近親者のみで執り行うことが多く、あくまで遺族が主体となる葬儀です。密葬に取引先の関係者などが多く会葬されると、遺族だけでは対応しきれません。会社としても、密葬の日時などが漏れ伝わらないよう情報の管理に最新の注意を払い、速やかに社葬の実施を通知することが重要です。

 

2.合同葬

会社と遺族がともに通夜、葬儀・告別式を合同で行う儀式を「合同葬」といいます。合同葬は、密葬・本葬をわけず、遺族の意思・宗旨を反映した葬儀となり、荼毘に付すまでを執り行います。

 

故人が亡くなられてから5日~1週間前後に行われるため、準備期間は短く、そのなかで関連各所へ葬儀日程などの連絡を行い準備・調整を進めていきます。非常に限られた時間のなかで遺族と会社との意見調整が必要になりますが、改めて社葬を行うようりも時間的利点が多く、多くの方に個人のお顔を見てお別れをしていただくことができます。

 

また、費用を遺族と会社で按分することにより、遺族・会社双方の経済的な負担を軽減できることもメリットのひとつです。

 

3.お別れ会

「お別れ会」あるいは「偲ぶ会」は、社葬と同じように、遺族が主体の密葬を執り行ったあとで、日を改めておこなわれます。

 

儀式に重きをおいて厳粛な雰囲気で執り行う「社葬」に対し、「お別れ会」は、宗教にとらわれない自由な形式でおこなわれます。お別れ会は、式典を中心とする場合や、おもてなしの会食をメインとする場合など、そのあり方はさまざまです。会場もホテルやレストラン、レンタルスペースなどさまざまな場所でおこなわれます。

 

自由な形式で行われるのが「お別れ会」「偲ぶ会」の特徴ですが、新体制の紹介や今後の会社の方針をきちんと伝えることは大切です。

 

 

社葬の役割

1.故人への追悼

会社の創業から設立、発展に貢献した故人を偲び、その功績を讃え、感謝とともに弔意を示す役割です。遺族をはじめ、生前の故人を良く知る社内外の人々のグリーフケアにもつながります。

 

2.社外への広報

顧客、株主、取引先などに、会社の新体制や将来像を示す”広報”としての役割です。企業トップなど経営の中心にいた人物のご逝去は、会社にとっても大きな転換期。社葬を滞りなくおこなうことで、関係各所に安心感を与え、良好な関係を継続することができます。

 

3.社内の結束

社葬という重要な儀式を成功させるために、社員が一致協力することで、新体制下での結束や一体感をさらに高めることができます。

 

 

次ページ社葬を実施する際の流れを注意点とともに解説