年金の落とし穴…まさか「遺族年金」がもらえないなんて
標準的な夫婦で年金月22.4万円……ライフスタイルにもよりますが、贅沢しなければ生きていける、そんな水準でしょうか。
ただ夫が亡くなったり、障害を負ったりすると、途端に生活が成り立たなくなってしまうケースも。そこで重要なのが、障害年金と遺族年金というわけです。
ただ気をつけたいのが「年金の落とし穴」。年金には受給要件に細かな規定があり、そこから外れると「年金がもらえない!」という緊急事態に直面します。
たとえば遺族厚生年金がもらえない例として、62歳の夫と60歳の専業主婦という夫婦(子はすでに独立)。夫は大学新卒で入社した会社で18年ほど働いたのちフリーランスとして独立、会社員時代は平均的な大卒社員の給与を手にしてきたとします。65歳から手にできる年金は、老齢基礎年金が満額支給だとすると厚生年金と合わせて夫婦で月18万円ほどになる計算です。
一般な会社員夫婦よりは少ない年金額。その見通しに合わせて資産形成をしてきたのに夫が急逝。妻は遺族基礎年金と、遺族厚生年金を受け取れると考えるか。遺族厚生年金の場合、その年金額は老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額。夫婦の場合、年間40万円強受け取れる計算です。しかしこの場合、老齢厚生年金を受け取ることはできません。
――遺族年金がもらえない!? そんな、まさか
夫を亡くし、しかも遺族厚生年金ももらえないというダブルの不幸。その理由は遺族厚生年金の受給要件にあります。遺族厚生年金の受給要件は以下の5つ。
①厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
②厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
③1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき
④老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき
⑤老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき
さらに、
◆①および②の要件については、死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。ただし、死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。
◆④および⑤の要件については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限ります。
という特記事項もあります。この場合、④に該当。厚生年金の加入期間は25年以上なければならず、遺族厚生年金の受給要件を満たさないのです。
年金制度は複雑で、色々な例外があります。厚生年金の加入期間が25年未満でも、受給対象になる場合もあります。せっかくもらえる年金なのにもらい忘れ……ということがないよう、まずは年金事務所に問い合わせるのがおすすめです。