年金月6万円・貯蓄2,000万円で老後を過ごす66歳女性
通帳を見て村上さん(66歳女性・仮名)はため息をつきました。その日はある地方銀行に預けた1年物の円定期預金の満期日だったのですが、2,000万円の預金に対して付いた利息は500円にもなりませんでした。
村上さんは独身で小さな美容室を1人で切り盛りしてきましたが、昨年腰を痛めてお店を閉じました。そのころちょうど65歳を迎えたので年金を受け取り始めたのですが、個人事業主であったため、もらえるのは月6万円を少し超える国民年金だけです。
幸い村上さんは親から相続した中古マンションを所有していましたので住むところには困りませんが、生活費は年金だけでは足りず、なんとかこの2,000万円を運用して生活の足しにしたいと考えていました。
「定期預金の代わりに…」勧められたのは高利率の“債券投資”
そんな村上さんに「定期預金の代わりに」と勧められたのが「債券投資」です。その地銀と提携する証券会社の営業員によると利率は年間5%を超える商品もあるとのことです。事前に自分でもネットで調べたところ「債券は株式よりもリスクが少ない投資」と書いてありました。村上さんは2,000万円の投資で年間100万円超の「不労所得」を稼いでくれるこの債券を、預金のほぼすべてをはたいて購入することにしました。
購入手続きの前に村上さんは証券会社の営業員から「繰上げ償還」、「ノックイン条項」などよくわからない専門用語がたくさん出てくる重要事項の説明なるものを受けましたが、高利回りの金融商品を買えたことに興奮して上の空で聞き流していました。
3ヵ月後に20万円が振り込まれるも、半年後に株式市場が下落…
村上さんが購入した債券は3ヵ月毎に年利の1/4ずつの「利息」が支払われる設計であり、購入3ヵ月後に税引き後でも20万円を超える金額が初めて振り込まれたときには、思わずワインを買って1人で祝杯をあげました。
そのころ欧米諸国ではコロナ禍後のインフレが酷くなるなかで金融引き締めに転じたため、株価は下落し始めました。そして日本の株式市場もその影響もあり、下がり始めました。6ヵ月後、そろそろ次の利息が振り込まれるだろうと思っていた矢先に証券会社の担当者から村上さんに連絡が来ました。
「保有されている債券ですが、連動株価がノックイン価格に達してしまいましたので、お買い上げいただいたときの条項のとおり、その株式での現物償還となります」
「えっなにそれ!?」
村上さんはその説明を理解できずに頭のなかが真っ白になってしまいましたが、自分を落ち着かせて、なにかの間違いであってほしいという願いを込めて知り合いのFPに相談することにしました。