年金受給額も貯蓄額も十分と思っていても、予想外の事態により老後破産に陥ることはあります。本記事で紹介するSさん夫婦もそうでした。では、老後の生活を安心して送るためにはどうすればよいのでしょうか? 本記事では、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が、Sさん夫婦の事例とともに老後のライフプランについて解説します。
夫婦2人で「年金月27万円・貯蓄5,000万円」、念願の珈琲店を開業し老後を大満喫も…一転「老後破産」に陥ったワケ【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

全国平均でみる、老後の貯蓄額・かかる生活費は?

総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)2022年平均結果(二人以上の世帯)では、世帯主が65歳以上の世帯では貯蓄現在高が2,500万円以上の世帯が約3分の1を占めています。平均値は2,414万円、貯蓄保有世帯の中央値は1,677万円です。Sさん夫婦のように貯蓄残高が4,000万円以上ある世帯は65歳以上の世帯の17.9%です。

 

厚生労働省「国民生活基礎調査2021年」では、高齢者世帯の所得の種類別1世帯当たり平均年間所得金額は、総所得が332.9万円のうち公的年金・恩給は207.4万円で、割合は62.3%を占めています。


一方、夫婦2人の老後の最低日常生活費は月額23.2万円、ゆとりある老後生活費は月額37.9万円(公益財団法人生命保険文化センター、2022(令和4)年度 生活保障に関する調査(速報版)という調査結果がでています。

 

今回は、2人で公的年金額が月27万円、貯蓄5,000万円のSさん夫婦が老後破産に陥ったケースを紹介します。調査結果から考察すると日常生活費を公的年金のみで賄うことができ、老後の貯蓄額もあるSさん、友人たちから羨まれる悠々自適生活であったはずが一転、老後破産に……Sさん夫婦にいったいなにが起こったのでしょうか。

Sさん夫婦の公的年金の詳細

Sさんの年金の加入歴から公的年金額の内訳は次のとおりです。

 

・大手出版社:22歳から40年間、厚生年金保険に加入、平均標準報酬額月額62万円。

・62歳から2年間は非常勤役員のため、社会保険加入なし。

・国民年金任意加入し、老齢基礎年金を満額にする。

 

Sさん夫婦が65歳から受け取る公的年金額

老齢基礎年金:夫 79万5,000円(2023年度 新規裁定者満額)

       妻 79万5,000円

 

老齢厚生年金:62万円×5.481÷1,000×480月=1,631,145円

 

合計:322万1,145円/年(月額26万8,428円)

※加給年金、差額加算は考慮せず