会社の成長と社員の幸福度向上が直結しにくくなった昨今、社員個人にとって会社は「人生を捧げる場」ではなく、「自己実現をする場」になっています。今回は、米国・人材系ビジネスの最前線企業「LinkedIn」の日本代表を務めた経験もある村上臣氏の著書『稼ぎ方2.0「やりたいこと」×「経済的自立」が両立できる時代』から一部を抜粋し、「推し」に熱狂するファンの姿を例に、自己実現で稼ぐヒントを探ります。
「推し活」にハマる人はジャニーズやAKBの何に共感しているのか (※写真はイメージです/PIXTA)

勝つためにこそ「やりたいこと」を徹底してやる

かつての日本では、会社の業績が伸びることで、そこに所属している人の給料が上がり、福利厚生も充実し、幸福度が増すという好循環が成立していました。

 

要するに、会社の成功と社員個人の成功が同じベクトルを向いていたわけです。

 

同じベクトルを向いていたからこそ、多くの社員が会社のために身を粉にして働き、残業や頻繁な出張、転勤などを当たり前のように受け入れ、進んで会社への忠誠心を示していました。

 

しかし、今では会社と個人のベクトルにはずれが生じ、同じ方向を向くのは非常に難しくなっています。

 

現在は多くの会社が成長の伸び悩みに直面しており、成長の伸び悩みだけでなく、会社が買収されたり倒産したりするリスクも高まっています。

 

このような状況下では、会社という拠り所が失われたときに、自分も共倒れになることが明白です。会社を拠り所にして、自分のアイデンティティを全面的に委ねるような生き方は危険すぎるとの認識をみんなが持っています。

 

会社も社会も不安定で、先行きが不透明な時代にあっては、不安定になっているものへの依存が精神をむしばむという現象が起こります。

 

会社にすがろうとすればするほど苦しくなったり、不安が大きくなったりすることが避けられないのです。

 

「会社のため」が通用しなくなった稼ぎ方2.0の時代に優先されるのは個人の想いです。

 

個人が理想とするキャリアを追求するということです。特に若い世代においては、「自分が仕事を通じてどれだけ成長できるか」という成長実感やワーク・ライフ・バランスを重視する傾向が見られるようになっています。

 

若い人ほど、「会社に入ったのだから、会社のためにすべてを捧げる」という考えを持つ人は少なくなっています。彼らは自分の成長と幸福のために会社で何が得られるかを考え、自己実現できる会社を選んで入社しています。

 

「会社は個人がやりたいことをやるための自己実現の場である」という認識に変わってきているのです。

 

こういった自己実現を重視する価値観は、必然的にクリエイターエコノミーにもつながります。クリエイターエコノミーでは、何か自分が情熱を持っているものを仕事にして収益を得れば、自己実現欲求が満たされるからです。

 

今は、会社で自己実現を追求するだけでは飽き足らなくなった人たちが、社外に飛び出して、クリエイター活動を行ない始めている時代なのです。