日本人の老後…以前から「夫婦で2,000万円は必要なんじゃない!?」が平均値
公的年金が収入のほとんどを占めるようになる老後。もちろん「不労所得を手にしているからと余裕」というケースもありますが、多くの人は「年金だけでは不安」「貯蓄しなきゃ」と焦る気持ちを抱えているでしょう。
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和4年)』によると、「老後のひと月当たり最低予想生活費」は平均35万円だったのに対し、「年金支給時に最低準備しておく金融資産残高」は平均1,934万円。およそ、夫婦で2,000万円。これが「老後のために貯めなきゃ」の平均値です。
2,000万円と聞いて思い出されるのが、「老後2,000万円問題」。2019年、金融庁が発表した「老後30年間で約2000万円が不足する」という試算に端を発した大問題です。「そんなに貯蓄が必要なんて……聞いてない!」「老後は年金でなんとかなるんじゃないのか!」など、批判が相次いだ一方で、多くの人が自助努力の必要性を感じ、積立貯蓄を始めたり、NISAを始めたり、と、資産形成を進めるきっかけになりました。
ただ、この「老後に2,000万円が必要」という感覚は、「2,000万円問題」よりも随分と前からあるようです。同調査の同質問結果について時をさかのぼると、2007年時の平均は2,071万円で、以降も常に2,000万円前後でした。“なんとなく”だったかもしれませんし、金融機関の試算と営業の影響かもしれませんが、以前から「老後のために2,000万円は必要かな」というのが人々の感覚であり、「老後2,000万円不足」というのは、驚愕の事実でもなかったのです。ただ「2,000万円足りないなんて、国が言うのか!」というのが、多くの国民が感じたことだったのでしょう。
関心の高い老後の生活ですが、同調査では78.5%が「老後の生活が心配である」と回答。その理由のトップが、「十分な金融資産がないから」が68.0%、「年金や保険が十分ではないから」が52.1%。「生活の見通しが立たないほど物価が上昇することがあり得ると考えられるから」と物価高への懸念も36.2%。「現在の生活にゆとりがなく、老後に備えて準備(貯蓄など)していないから」24.7%、「退職一時金が十分ではないから」が20.3%と続きます。
収入手段が限られるうえ、いつまで続くか分からない老後。必要と考える貯蓄があったとしても、心配は尽きないのでしょう。またそもそも資産形成を始める元金さえないと、生活困窮を訴える声も見逃せません。