1―はじめに
総務省「国勢調査」によれば、東京23区の分譲マンションに居住する世帯*1は、2005年から2020年の15年間で1.5倍(約70万世帯→ 約103万世帯)に増加し、総世帯数に占める割合は約17%から約20%に増加した。
また、不動産経済研究所によれば、2022年に東京23区で販売された新築分譲マンションの平均価格は8,236万円となり*2、2005年と比べて+67%上昇した。分譲マンションで暮らす人々が増加し、価格が大きく上昇するなか、マンション市場への人々の関心は高まっている。
そこで、本稿では、新築マンションの販売データを用いて、「新築マンション価格指数」を作成し、東京23区の新築マンション市場の動向を概観する。
*1 「持家」かつ「3階建て以上の共同住宅」に居住する世帯
*2 2023年3月の平均価格は、「三田ガーデンヒルズ」(平均価格約4億円台)と「ワールドタワーレジデンス」(平均価格約2.5億円)が押し上げ、過去最高の1億4360万円となった。
2―新築マンション市場を取り巻く需給環境
1│新規供給戸数の動向
不動産経済研究所によれば、首都圏の新築分譲マンションの新規供給戸数は、2005年の8.4万戸から2022年の2.9万戸へ約1/3の水準に大幅減少した。同様に、2022年の東京23区の新規供給戸数は1万797戸(2005年対比▲65%減少)となり、2005年以降で最も低い水準にとどまった。
各マンションデベロッパーは市場環境をみながら慎重な供給姿勢を維持している。
2│建築コストの動向
建設物価調査会「建築費指数」によれば、東京の集合住宅(RC造)(2022年)の建築費は、「133.8」(前年比+8%)となり2005年対比で+35%上昇した。
国土交通省「建設労働需給調査」によれば、建設業の労働需給を示す「建設技能労働者過不足率」は、2011年以降、一貫してプラス(人手不足)で推移している。
「建設業」の就業者は他の産業と比較して若年層の割合が少なく高齢化が進行している。構造的な人手不足を背景に建築コストの上昇が続いており、新築マンションの供給戸数を押し下げる要因の1つとなっている。
3│開発用地の動向
土地総合研究所「不動産業業況等調査」によれば、「住宅・宅地分譲業」の「用地取得件数」の動向指数は、2013年以降マイナス(取得件数減少)で推移している。デベロッパーの開発用地の取得は低調な状況にある。
マンション開発適地がもともと限定的である東京23区ではマンション用地価格が高止まりするなか、今後も供給戸数が増えにくい状況が続くと考えられる。
4│望まれる住宅形態
国土交通省「土地問題に関する国民の意識調査」によれば、東京圏在住者を対象に「今後望ましい住宅形態」を質問したところ、一貫して「一戸建て」が最も多く、次いで「戸建て・マンションどちらでもよい」、「マンション」の順となっている[図表1]。
ただし、「一戸建て」の比率が減少傾向(2006年79%⇒2021年48%)にあるのに対して、「戸建て・マンションどちらでもよい」(10%⇒24%)及び「マンション」(13%⇒22%)の比率が増加している。東京圏では、依然として「一戸建て」を望む人が約半数を占めるものの、都心部を中心に「マンション」居住を志向する人が増加しているようだ。