月収が高く、貯蓄も十分。将来、十分な退職金だってもらえる。そんな典型的な勝ち組といわれるサラリーマンでも、定年後に生活苦に陥り、最悪、破綻を迎えるケースがあります。なぜなのでしょうか?
月収100万円・貯蓄4,000万円…53歳サラリーマン「圧倒的勝ち組」のはずが、定年後7年で「老後破産」のワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

月収100万円のサラリーマンでも「老後破産」に陥る可能性大

たとえば、年収1,500万円世帯(世帯主年齢、53.1歳)の場合。現役時代の平均的な月収支は以下の通り。月収100万円、53歳のサラリーマン世帯で、月56万円を支出しているイメージです。また同年収世帯の貯蓄額は平均3,861万円、住宅ローンなどの負債は平均1,364万円。ゆとりある家計、将来の備えもバッチリ、といった印象です。

 

【世帯収入1,500万円家計の平均月収支】

◆世帯構成:3.34人

◆世帯主年齢:53.2歳

◆実収入:1,390,253円

・うち、世帯主収入:1,007,484円

◆実支出:913,135円

・うち、消費支出:558,194円

(内訳)

・食料:120,178円

・住居:19,635円

・光熱・水道:29,898円

・家具・家事用品:24,245円

・被服及び履物:26,835円

・保健医療:22,512円

・交通・通信:76,649円

・教育:51,155円

・教養娯楽:64,243円

・その他の消費支出:122,844円

 

出所:総務省『家計調査 家計収支編』(2022年)

※数値は2人以上/勤労世帯

 

一方、65歳から受け取れる年金額は上限があります。仮に20歳から60歳まで会社員で、厚生年金の計算の基本となる平均標準報酬額は上限の65万円だったとしても、65歳から受け取れる厚生年金部分は最高で約14万円、国民年金と合わせても20万円程度にしかなりません。妻が専業主婦だとすると、月に26万円、1年でも300万円程度。現役引退直前まで収入減がなかったとしても、年金生活に突入した途端、収入は5分の1程度になるわけです。

 

たとえば、引退時に定年退職金が3,000万円上乗せされて、貯蓄が7,000万円に増えたとしましょう。そこで負債をすべて返済すると、残り6,000万円。それと年収300万円が当面の老後資金になります。

 

しかし、年金生活に入っても現役時代と同じ金銭感覚でいると、1年で360万円ほどの赤字となり、その分を貯蓄から取り崩すことになります。単純計算、16年で底をつきますが、60歳定年から65歳までは基本的に年金収入はなし。そうなると、60歳定年から7年後に貯蓄は使い果たし、毎月の赤字を補填できない状態に。老後破産となるわけです。

 

極端な例ではありますが、「あの人、お金持ちだったはずなのに……」と首を傾げてしまう破産劇の多くは、定年後の必須事項である「ライフスタイルの見直し」を怠ったために起こります。そこそこの高所得者ほど「自分は破産とは無縁」と思いがちですが、富裕層でない限りは、誰もが「老後破産」と隣り合わせと考え、対策を講じておくことが肝心です。