「絶対に変動金利!」のすすめを信じ“まさか”の事態に
もしも変動金利が上がったらどうなるのか、ある家庭を例にとってシミュレーションしてみましょう。
Aさん……36歳/会社員/年収650万円
A妻……34歳/契約社員/年収350万円
娘……高校生/医学部進学を目指す
ローン借入額……5,500万円
ローン金利……変動金利で0.5%
毎月の返済額……14万2,771円
Aさんは大手住宅メーカーでマイホーム購入を決断。住宅ローンについて検討しているときに、ファイナンシャルプランナー(以下、FP)を紹介されました。
そのFPは、「住宅ローンを組むなら、絶対に変動金利です。日本経済は低金利から抜け出すのに何十年もかかります」と断言します。Aさんはその勢いに押され、変動金利で借り入れをすることにしました。金利は0.5%で、毎月の返済額は14万2,771円。A一家にとって「ギリギリ支払える額」という感覚でした。
しかし5年後、変動金利は1.0%に上昇。返済額は15万3,485円に増加しました。「1万円くらいなら」とAさんは支払いを続けましたが、そのさらに5年後には金利が2.0%まで上昇。返済額は17万2,618円になりました。わずか10年で、当初より3万円も返済額がアップしてしまったのです。
こうなると、「一部繰り上げ返済」で元金を減らすのがリスク回避の鉄則です。しかし、Aさんには繰り上げ返済にすぐに使える現金が手元にありませんでした。資産の多くが投資信託と保険でしたが、娘が医学部進学を目指しているため、学費用の投資信託を解約するわけにいきません。
FPのすすめを信じて、現金での貯蓄はごくわずか。「現金は生活費3ヵ月分を残し、残りは投資(投資信託と変額保険)に回すべき」という指南を受け、それを実行していたのです。
変額保険は、解約すると手元に戻るお金は払込保険料の累計額を下回ります。さらには、新型コロナウイルス流行の影響で勤務先の業績が低迷しており、年収が予想どおりに上がっていない状況にありました。
これ以上の金利上昇を受け入れることはできないため、Aさんは固定金利の「フラット35」に借り換えを検討し始めました。しかしAさんは、2年前に初期の大腸がんで手術をしたことがあります。団体信用生命保険に加入できないことがわかり、借り換えは不可能に。
Aさんの家計は、身動きが取れずカツカツの状態です。変動金利の緩やかな上昇とともに、A一家は「家計破綻」へと突き進んでいくのでした……。