一般的に年齢を重ねるごとに給与が増えていく日本のサラリーマン。ピークに達するのは50代だといわれていますが、誰もが順調に進むわけではありません。なかには「がんの宣告」という、予期しない事態に直面する人も。みていきましょう。
月収52万円・50代の大卒サラリーマン、突然の「がん宣告」に狼狽…いったい「治療費」はいくらになるのか? (※写真はイメージです/PIXTA)

がんの平均治療費は60万~70万円…自己負担分は3割でも

会社員としてピークに達し、また定年に向けて集大成を迎えようとしている50代。そんなときに「あなたはがんです」といわれたら……「不治の病」の印象が強かったがんも、昨今は治癒率もぐんとあがっています。しかし誰もが大きなショックを受けるでしょう。

 

一方で心配なのはお金のこと。家のローンも残っているし、子どもの進学も控えているし、なによりも休業中は給与ダウンも避けられない、治療費もいったいどれくらいかかるのか……考えだしたらきりがありません。

 

がんの治療費は大きく「公的医療保険等の対象となる費用」と「対象にならない費用」に分かれます。

 

◆公的医療保険等の対象となる費用

・診察費

・検査費

・入院費

・手術、放射線治療、薬物療法などの費用

・介護サービス費など

◆それ以外にかかるお金

・通院・入院時の交通費

・公的医療保険の対象外の治療(開発中の試験的な治療法や薬、医療機器を使った治療など)の費用

・差額ベッド代、文書料(診断書など)、食費、日用品、医療用ウィッグ、家族の交通費・宿泊費、お見舞いのお返しなど

・生活費

 

出所:国立研究開発法人国立がん研究センター、ホームページより

 

厚生労働省『令和2年度医療給付実態調査』で入院時の医療点数から算出した医療費をみていくと、1回の入院治療で60万~70万円というのが平均値。3割負担と考えると、20万円の出費となります。

 

【がんの平均治療費(入院1回)】

・胃:656,166円

・結腸:664,906円

・直腸S状結腸移行部及び直腸:768,406円

・肝及び肝内胆管がん:637,761円

・気管、気管支及び肺:717,780円

・乳房:592,376円

・子宮:638,986円

・悪性リンパ腫:1,021,226円

・白血病:1,691,806円

・その他の悪性新生物:674,791円

 

出所:厚生労働省『令和2年度医療給付実態調査』より算出

 

20万円くらいの負担であれば……そう考えるかもしれませんが、がんの治療は1回の入院だけに留まらないケースも多く、金銭的にも厳しいと感じるかもしれません。

 

医療費の負担を軽くする公的制度としては、医療費の払い戻しを受けられる「高額療養費制度」や税金の還付を受けられる「医療費控除」があります。また生活を支える制度としては、休職を検討する場合の「傷病手当金」、生活や仕事などが制限される可能性がある場合には「障害年金・障害手当金(一時金)」など、さまざまなサポートがあります。「がん相談支援センター」などの各医療機関の相談窓口やソーシャルワーカーに尋ねるといいでしょう。

 

ただ公的な制度だけではカバーしきれない部分ももちろんあります。万が一のことは、誰にでも起こる可能性はありますし、それは明日にでも起きるかもしれません。他人事と思わず、普段から万全に備えておくことが重要です。