35歳夫死亡…分割返済が認められず、自宅を売却した妻
夫Rさん 35歳 会社員
妻Kさん 32歳 パート勤務
長女 7歳
次女 4歳
住宅ローン 5,500万円
死亡保険金 6,000万円
ご夫婦は3年前に新築住宅を購入。総額6,500万円の物件で、自己資金として1,000万円を入れ、残りの5,500万円は住宅ローンを利用しました。夫Rさんは年収900万円であり信用状態は問題がなかったのですが、ひとつ問題が。かなりの高血圧で治療中だったのです。収縮期血圧が220になることがあるほどの超高血圧でした。
このため団体信用生命保険には加入できません。よって住宅ローンの融資も断られてしまいました。いくつか銀行に問い合わせたところ、ある地方銀行が「生命保険で5,500万円以上の保障があるのであれば、証券をコピーさせてもらえたら融資します」という条件を提示してくれました。幸い、Rさんは収入保障保険という死亡保険に加入していました。死亡時は毎月家族に年金が支払われるタイプの保険です。現在の死亡保障額は一括受け取りで約6,000万円。これを提出することで無事融資を受けることができました。
しかし融資から3年後、夫Rさんは朝自宅で倒れてしまいます。脳卒中でした。救急車で運ばれたものの、その日のうちに死亡。悲しみに暮れた妻Kさんでしたが、これからのお金の計算をしてみました。
死亡退職金 500万円
預貯金 1,000万円
死亡保険金 6,000万円(毎月20万円)
遺族年金 月あたり約13万円
自分のパート収入 月7万円
死亡保険金で住宅ローンを一括返済することも考えましたが、娘さんを中学から私立に入れたかったため、現金を手元に残しておきたいと思いました。遺族年金とパート収入で生活していき、預貯金と退職金は教育費の一部に、毎月振り込まれる死亡保険金から毎月少しずつ住宅ローンを返済する……という計画を立てたのです。
妻Kさんは銀行に出向き、夫の銀行口座の解約をし住宅ローン返済の引き落とし口座の変更をしようと思ったのですが、そこで衝撃の事実がわかります。 男性の行員が現れ、妻Kさんにこういいます。
「住宅ローンの残債は一括で返済をお願いします」
驚いた妻Kさんは答えました。
「分割で返済はできないのですか?」
行員は鼻で笑うかのようにまたこういいます。
「分割返済をしたいなら奥さんが住宅ローンを借りることになりますが、パート収入の奥さんにそんな信用はないでしょう」
夫がいなくなるとこうも態度が急変するものかと驚いてしまいました。遺族である妻Kさんは「期限の利益」を喪失したのです。結局死亡保険から一括返済することになりました。
収入保障保険は毎月一定額を年金として受け取る仕組みですが、一括で受け取った場合、分割よりも受取額が少なくなります。しかしやむを得ません。一括で死亡保険金を受け取り、銀行に住宅ローンの残債5,200万円を返済しました。