年収550万円の36歳・会社員、妻と子のため「全額ローンでマイホーム」検討も…金融機関の判断が“真っ二つ”に割れたワケ【FPが解説】

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加藤 勇
年収550万円の36歳・会社員、妻と子のため「全額ローンでマイホーム」検討も…金融機関の判断が“真っ二つ”に割れたワケ【FPが解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

36歳のAさんは、妻と子ども1人の3人暮らしです。運良く子どもを保育園へ入れることができ、そろそろマンションの購入を検討しています。年収は550万円、妻はこれからパートを始めるといったところですが、仮に「5,000万円」のマンションを購入しようとした場合、融資を受けることはできるのか……金融機関X・Yの2ヵ所に尋ねたところ、両社の回答は真っ二つに分かれました。いったいなぜでしょうか。みていきます。

Aさんが余裕を持って返済可能な借入額はいくら?

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

一般論としては、Aさん一家は借入年収倍率として、年収550万円の5~7倍(2,750万円~3,850万円)が借入妥当額である。かつ、物件の頭金2割は準備しておきたいところだ。

 

5,000万円のマンション購入を目論むのであれば、本業での安定年収が約800万円あれば、返済比率は

 

金融機関X:実行予定金利0.5%にて毎月129,792円の返済×12ヵ月÷800万円×100=19.4%

 

金融機関Y:審査金利2%にて毎月165,631円の返済×12ヵ月÷800万円×100=24.8%

 

と、双方ともに懸念なきレベルとなる。

 

また、頭金として拠出するまではいかなくとも貯蓄額が1,000万円(物件5,000万円の2割)あれば、今後のライフプランの変化に柔軟に対応でき、かつ金融機関Yの担保処分価格3,200万円に1,000万円上振れすれば返済開始約6年で到達することになり(6年経過までは実質担保割れ)、見た目も改善される。

 

現状のAさん一家が住宅ローンを組むのであれば、借入年収倍率からの借り入れ妥当額から鑑みて3,800万円の物件(諸費用込)であれば、返済比率は、下記のとおり頭金の有無を問わず、問題なく返済できると思われる。

 

【変動金利0.5%・35年返済利用の場合】

頭金200万円投入(借入3,600万円):返済比率:毎月93,450円×12ヵ月÷550万円=20.4%

 

頭金なし(借入3,800万円・全額ローン):返済比率:毎月98,642円×12ヵ月÷550万円=21.5%

 

「ライフプランニング」で可視化を

今回のようなケースでは、まずは将来設計「ライフプランニング」を作成してみると良いだろう。「ライフプランニング」とは未来の家計簿のようなもので、今後想定される収入・支出・貯蓄額を見える化・数値化することができる。

 

マンション購入によって、教育費や老後資金に懸念は出ないのか、住宅ローン自体はきちんと返済できるのかをライフプランニングによって判断すべきだ。作成にあたっては、信頼できるファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめする。

 

Aさんがマンションを購入するにあたり、「借りられる金額」と「返済できる金額」は異なる。金融機関X・Yともに正当なジャッジを下しているとはいえ、実行に移すのはAさん自身だ。非常に悩ましい案件であり、少しでも不安を感じるようであれば、ライフプランニング表を客観視して見ると良いだろう。

 

「信金の神様」と称された小原鐵五郎氏の言葉に「貸すも親切、貸さぬも親切」がある。金融機関X・Yともに与信判断としては間違いではない(むしろ正解はない)。本件事案では、Aさん一家が「真に望む人生」をよく考察すべきである。本当に「いま、そのマンションを購入すべきか」どうかを。

 

【参考】

※ 返済比率:年収に占めるローンの年間返済額の割合、「高くても40%以下」が一般的目安。

※ 担保評価額:市場価値概念とは異なり、客観的・合理的な評価方法で算出した評価額。

※ 借入年収倍率:住宅ローンが年収の何倍か、業種によっても目安は異なる。

 

 

加藤 勇

FP Office株式会社

ファイナンシャル・プランナー

 

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本記事は、株式会社クレディセゾンが運営する『セゾンのくらし大研究』のコラムより、一部編集のうえ転載したものです。