再雇用で働く63歳Aさん…年金額はどれぐらい増やせる?
63歳の男性Aさんは、3年前に定年を迎え、現在は同じ会社に再雇用として勤務している。現役時代の年収は750万円だったが、現在の年収は450万円ほど。70歳まで住宅ローンの返済があるため、退職金でローン残債1,000万円を繰り上げ返済した。
住宅ローンは無事完済したものの老後資金に不安を持ったAさんは、お金の専門家であるFP(ファイナンシャルプランナー)のところに相談に訪れた。
Aさんの給与、年収、資産、生活費等は下記の通りである。
・年収:450万円(65歳まで)
・年金※1、※2:年間約175.2万円(月14.6万円)
※1 手取り:年148万円(月12.4万円)
※2 60歳時点の加入実績:老齢基礎年金:77万7,800円、老齢厚生年金額:97万4,200円
・資産:現預金1,000万円、投資信託500万円
・生活費:年間170万円(物価上昇を考慮しないものとする)
・その他支出※:年間50万円
※ 住宅維持費、保険料、定期支出(旅行等)、臨時支出など
上記の条件をもとに65歳~100歳までのキャッシュフローを試算した結果、約1,000万円不足することがわかった。月々の収支が約3万円改善すると解決できる水準だ。
平均的な年金受給額「約14.7万円」の計算式
日本の平均的な年金額は、厚生年金加入者(会社員等)の場合月額14.6万円である※。
※ 厚生労働省年金局「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」より
(https://www.mhlw.go.jp/content/001027360.pdf)
この内訳は、老齢厚生年金として月額約8.1万円、老齢基礎年金として月額約6.5万円となる。老齢厚生年金額は、「平均標準報酬額」(収入)と「厚生年金加入月数」(勤務期間)により算出される。
つまり、会社員の場合、平均年収※から平均的な年金受給額を算出することができる。
※ なお、2003年までは「平均月収」。平均年収に変更になった理由は、当該時期以降、賞与からも社会保険料の徴収がされるようになったためである。
【老齢基礎年金の計算式】
77万7,800円(令和4年度年金額)×納付月数(最大480ヵ月)÷480ヵ月(40年間)
【老齢厚生年金の計算式】
・平成15年(2003年)3月まで
平均標準報酬“月”額×7.125÷1,000×厚生年金加入月数
・平成15年(2003年)4月から
平均標準報酬額×5.481÷1,000×厚生年金加入月数
計算式がわかったところで、一般的な老齢年金額を試算してみよう。
・23歳~60歳まで、丸38年間会社勤め
・勤務期間中の平均年収は443万円※
(内訳……月収27万円、賞与119万円(夏:59万円、冬:60万円))
・国民年金第1号被保険者期間(20~22歳)は保険料納付済み
※ 国税庁「令和3年分民間給与実態統計調査」より
(https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2021/pdf/000.pdf)
仮に上記の条件に当てはめてみると、「老齢基礎年金」は77万7,800円×480ヵ月(納付月数)÷480ヵ月=77万7,800円(満額)、「老齢厚生年金」は、平均標準報酬額が(標準報酬月額の28万円※×12ヵ月+夏のボーナス59万円+冬のボーナス60万円)/12ヵ月=37.9万円となるため、37.9万円×5.481÷1,000×480ヵ月=99万7,100円(100円未満切捨て)となる。
※ 全国健康保険協会東京支部「令和4年3月分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」より
(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r4/ippan/r40213tokyo.pdf)
これらを合算すると、もらえる年金額は老齢基礎年金77万7,800円+老齢厚生年金99万7,100円=年177万4,900円(月14万7,000円)であると導き出せる。
なお、ご自身の平均標準報酬(月)額や年金受給額を確認したい場合は、ご自宅に届く「ねんきん定期便」を確認するか、または日本年金機構へ問い合わせすることをおすすめする。
また、筆者は老齢厚生年金の計算式を略式化し、年収×1/200※×厚生年金加入年数で概算することが多い。
※ 5.481/1,000を大まかに約分している。