ねんきん定期便…49歳の見込み額と50歳の見込み額
たとえば20歳で社会人となり、平均的な給与額を手にし続けてきた49歳のサラリーマンがいたとしましょう。この時点での平均給与(所定内給与)は月38.2万円、年収は627万円。この年の誕生月に手にする「ねんきん定期便」には、これまでの加入実績に応じた年金額が記載されています。
厚生年金の受給額は加入期間が2003年3月までは①「平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数」、加入期間2003年4月以降は②「平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数」で計算できます。
便宜上、②で計算してみます。平均的なサラリーマン、49歳時点の平均標準報酬額は41万円。この時点で手にできる厚生年金額は月6.5万円ほど。そして国民年金は月4.6万円ほどになります。つまりこの時点で保険料をまったく支払うことなくなれば、65歳から月11.1万円の年金を手にできるということ。そのようなことが「ねんきん定期便」からわかるわけです。
――月11万円⁉ これしかもらえないのか!
「ねんきん定期便」を手にした人のなかにはそう早合点し、記載されている年金額に身震いしている人も。当然、49歳であれば、あと10年勤めあげれば年金額はアップします。前述のとおり50歳になると、このまま会社員を60歳まで続けた場合の年金額が記されるようになります。ちなみに50代前半の平均給与(所定内給与額)は月41万円、年収は671万円です。
60歳まで平均給与を手にするサラリーマンの平均標準報酬額は44万円。49歳時点よりも最終的にプラス3万円となります。そこから算出される厚生年金の受給額は月9.6万円。国民年金は満額月6.4万円なので、60歳まで無事に勤めあげれば、65歳からは月16万円の年金を手にできる……そんな未来図が「ねんきん定期便」でわかるわけです。
5万円ほど増えた年金額に、50歳のサラリーマンは、ほっと胸をなでおろすかもしれません。
総務省『家計調査 家計収支編』(2022年)によると、65歳以上の単身世帯、1ヵ月の消費支出は平均14万9,208円。40年間頑張ってきた「平均的なサラリーマン」であれば、「月16万円の年金」を手にすることができ、「年金だけで生きていく」というビジョンも描くことができます。
ただそれだけでは、トントンといったところ。年を重ねるごとに健康リスクは高まり、医療費や介護費などの出費は増えていきます。さらに昨今の物価高のように、年金生活者はインフレに弱いもの。そんな事態にも耐えられるよう、「年金だけで十分」とはいえ貯蓄は必須。どれほど必要かは、ライフスタイルや考え方によるでしょうから、年に1回の「ねんきん定期便」をきっかけに、資産形成の進め方を点検してみるといいでしょう。