超低金利や控除により住宅ローンを借りやすくなっている一方、返済計画の目算が狂い、家計破綻に陥る人が増えています。無理のない返済計画を立てるにはどうすればよいのでしょうか。手取り30万円の45歳、Aさんの事例とともに1級FPの川淵ゆかり氏が解説します。
「明日が怖い」…“手取り30万円”45歳・飲食チェーン正社員が陥った「住宅ローン破綻」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「借入れ可能額=返せる見込みの金額」じゃないの?

超低金利に住宅ローン控除。一見、昔に比べると家は取得しやすくなったように思えますが、住宅ローンで苦しんでいる人は増えているように感じます。

 

まず、借入れ可能額をそのまま信用してはいけません。年収だけで借入れ可能額は算出されてしまいますが、同じ年収でも年齢や家族構成などはさまざまです。住まいを買った当初は問題なくても、お子さんの成長で教育費がアップしたり、親の介護費用がかかるようになったりと、将来的に支出が増えて家計を圧迫するケースもあります。また、終身雇用が崩壊した現代、住宅ローン返済期間中の転職や役職定年等といった収入の変化も当たり前となってきました。

 

もちろん、すべてを予想することはできませんが、だからこそ購入時に慎重に冷静に判断しないといけません。住まいは大きな買い物ですから、一生を左右することもあります。

 

さて、借入れ可能額ですが、一般的に毎年の返済額を年収の30%(金融機関によっては40%)を基準に算出します。ですが、借入れ可能額といっても目一杯借りるのはリスクが高すぎます。毎年の返済額は年収の20%、借入れ金額は年収の5倍まで、を目安に考えてみましょう。

 

たとえば、Aさんのように年収600万円の方ですと、毎年の返済額120万円(毎月の返済額10万円)、借入れ金額3,000万円となります。これを目安に、将来の支出なども考えて、物件価格や借入れ金額を決めるようにしましょう。

もし住宅ローンが払えなくなったら…

どうしても返済に困ってしまった場合、まずは金融機関に相談することをおすすめします。返済スケジュールの緩和等で条件を変更してもらえるケースがあります。いまは新型コロナの影響で支払いに困っている方も多いですが、専用の窓口や担当者を置いている金融機関もありますので、悩まず相談してみましょう。

 

収入ダウンにより今後も返済が難しい場合や老後も返済が残るようなローンを組んでしまった場合は、親御さんから生前贈与を受けることで負担を軽くすることができます。ただし、生前贈与を受けることで、贈与税がかかってしまったり、住宅ローン控除の金額が変わってしまったりする場合がありますので、税理士等の専門家に相談してみましょう。

 

2023年住宅ローン利用の注意点社会保険料や税金の負担は今後も大きくなっていくと思われますので、年収で返済可能額を判断するのは難しくなっている、と感じています。年収ではなく、手取り金額で「返せるかどうか」を考えるようにしましょう。

 

また、2023年は昨年に引き続き物価の上昇もあります。住宅ローンだけでなく、家計全般を見て借入れ額を決定しましょう。さらに、2023年は金利の上昇も気になるところです。変動金利型の金利も上昇しないとは限りません。もし、これから変動金利型の住宅ローンを利用しようと思う方は、余裕を持った返済計画を立てて利用するようにしてください。

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表