内閣府の調査によると、母子世帯のうち貯蓄が「ない」と答えた世帯は31.8%。一方、「ある」と答えた母子世帯の平均貯蓄額は「約389万円」となっており、シングルマザー(母子家庭)の生活の困窮は喫緊の課題です。本記事ではこのような家庭を救う「児童扶養手当」について、手取り月19万円のシングルマザーAさんの事例とともに社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。
手取り月19万円の40代・シングルマザー「元夫からの養育費ゼロ」の絶望…危機から救う「児童扶養手当」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

母子家庭の貯蓄状況

2019年の貯蓄の状況をみると、貯蓄があると答えた世帯のうち、児童のいる世帯の1世帯あたり平均貯蓄額は約723万円です。全世帯の平均貯蓄額は約1,077万円、高齢者世帯は約1,213万円、母子家庭は約389万円となっています

※ 厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況」より

 

貯蓄がないと答えた母子家庭は母子家庭全体の31.8%です。子どもの貧困率が2世帯に1世帯が相対的な貧困の生活水準となっていることを考えると、母子家庭の生活は、世帯によってかなり偏りがあるようです

※ 「共同参画」2019年2月号内閣府男女共同参画局より

公的扶助に頼りながら10年で「479万円」貯めたAさん

Aさんは40歳のときに離婚し、8歳の子どもと2人で生活することになりました。養育費は元夫が無職のためもらえず、貯蓄もない再出発です。先行きに不安を覚えていたAさんでしたが、「仕事と家庭・育児の両立に力を入れている」という文言に惹かれC社に応募。無事正社員として採用され、手取り額が約19万円となりました。

 

また、役所でひとり親としての諸手続きを行い、Aさんは一部支給となりましたが、「児童扶養手当」の支給を受けることができました。これにより医療費控除や就学支援を受けられることになったため、子どもが病気になった際の医療機関の受診や小学校の給食費・学用品代の負担も解消されました。下記の図は、月々のAさんの支出です(Aさんのお話をもとに筆者作成)。

 

[図表]Aさんの生活費内訳

 

Aさんは、子どもの金銭教育も兼ねて節約生活を楽しむことにしました。児童扶養手当や児童手当は貯蓄にあて、さらに全体的な支出を見直しました。その結果、次のとおり、月3万5,000円を貯蓄に回すことができました。

 

・つみたてNISAに月2万円
・iDeCoに月1万円
・万一のリスクに備えて生活費の補填として月5,000円

 

児童扶養手当は、諸条件に該当した場合子どもが18歳になる年度末(高校卒業)まで支給されます。現在は公立高校の学費も無償化となっているため、つみたてNISAは大学進学を希望する子どもの教育費にあてる計画で始めました。運用商品は低リスクで安心感のあるものを選び、想定利回りを3%とします。つみたてNISAは月2万円で10年運用すると、約279万円、iDeCoは65歳まで継続予定ですが、10年の時点で140万円となります。生活費とは別の通帳に入金し、現預金は60万円です。10年後には合計479万円貯めることができます。

 

つみたてNISAやiDeCoは運用益が非課税で再投資、さらにiDeCoは掛け金が全額控除のほか、受け取る際にも大きな控除があります。

 

まとめ

離婚後のAさんはご縁に恵まれ、正規雇用として採用された結果社会保険にも加入できました。公的扶助を受けながら、子どもの大学資金全額とまではなりませんが、給付型奨学金を申し込む予定です。シングルマザー(母子家庭)でも上手く節約し、賢く貯めることで子どもの教育費と同時に老後の備えにもできるのです。

 

 

三藤 桂子

社会保険労務士法人エニシアFP

代表