高齢者の2人に1人は「収入のすべてが公的年金」。さらに将来を見据えた貯蓄もない、という状態だと、不測の事態に対応することができません。そのような場合、有力な選択肢となる年金制度が、今年の4月からスタートします。みていきましょう。
年金月14万円だが「だめだ、お金がない…」多額の借金覚悟の71歳男性、ピンチを救う「繰下げ申出みなし制度」とは (※写真はイメージです/PIXTA)

将来を見据えた貯蓄…「ない」は高齢者の5人に1人

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』(令和3年)によると、年金世代となる60代、70代で「金融資産*を保有しない」という世帯は、それぞれ19.0%、18.3%。5人に1人は将来を見据えての余裕はない、という状況です。

 

*本調査では、「定期性預金・普通預金等の区分にかかわらず、運用の為または 将来に備えて蓄えている部分とする。ただし、商・工業や農・林・漁業等の事業のために保有している 金融資産や、土地・住宅・貴金属等の実物資産、現金、預貯金で日常的な出し入れ・引落しに備えてい る部分は除く」としている

 

ちなみに「金融資産あり」とした世帯の保有額は、60代で平均3,014万円、中央値で1,400万円、70代で平均2,720万円、中央値で1,500万円ほどです。

 

【金融資産保有世帯「保有資産額」の分布】

100万円未満:7.8%/5.5%

100万~200万円未満:6.0%/4.7%

200万~300万円未満:4.2%/3.7%

300万~400万円未満:4.0%/5.5%

400万~500万円未満:3.2%/2.4%

500万~1,000万円未満:7.2%/6.7%

1,000万~2,000万円未満:17.7%/20.0%

2,000万円以上:40.1%/41.6%

 

出所:金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』(令和3年)より算出

 

金融資産の保有額の分布をみていくと、将来への備えがあるか、ないか……その差はとても大きなものだといえるでしょう。

 

一方で老後の生活のベースとなるのが公的年金。高齢者の2人に1人は「老後の収入のすべてが公的年金」と回答していることから、できるだけ多くの年金を手にしたいもの。2021年、厚生年金受給者の平均年金受給額は老齢厚生年金で月額14万5,665円、国民年金受給者の平均年金受給額は老齢年金(加入25年以上)で月額5万6,479円(厚生労働省『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』より)。

 

また前出の世論調査によると「老後のひと月あたりの最低生活費」は60代で平均32万円、70代で平均31万円。あくまでも平均値であり、贅沢な老後を過ごしている人が値を大きく引き上げている可能性もありますが、「年金だけでは安心して暮らすこともできない」というのが現実だといえそうです。