なぜ高齢女性は「ビルの清掃員」を続けるのか?
パートであれば、時給1260円ほど、毎月7万円強を手にするビル清掃員。高齢女性というケースが多い職業ですが、そもそも、なぜ高齢者は働き続けるのでしょうか。日本、アメリカ、ドイツ、スウェーデン、それぞれの国で60歳以上を対象に行った調査から紐解いていきましょう。
「収入を伴う仕事をしたい/続けたい」といった60歳以上の人にその理由を尋ねたところ、日本では過半数が「収入がほしいから」と回答。続いて2割強が「働くのは体によいから/老化を防げるから」と回答しています。
【日本の高齢者「なぜ収入を伴う仕事がしたいのか/続けたいのか?」】
収入がほしいから:51.0%
働くのは体にいいから/老化を防げるから:23.1%
仕事そのものが面白い/自分の活力になるから:15.8%
仕事を通じて友人や仲間を得ることができるから:6.9%
出所:内閣府『令和3年版高齢社会白書(全体版)』
一方、米国やドイツ、スウェーデンといった欧米諸国では「収入がほしいから」の理由は、それぞれ32.2%、35.5%、25.1%と、日本と比べて圧倒的に低く、その分、「仕事がおもしろいから」という理由が多くなっています。
なぜ日本の高齢者は「収入」を理由に働き続けるのか……そのヒントは、高齢者の主な収入源からみてとれます。
日本の場合、「仕事による収入」が20.8%、「公的年金」が67.4%、「その他」が11.8%。一方、アメリカでは「仕事による収入」が17.3%、「公的年金」が53.5%、「その他」が29.2%。「その他」は、いわゆる資産形成によって得られる部分で、預貯金のほか投資などで運用してきた部分です。自己責任の国で、公的年金に頼れる部分が小さいため、「どうにかして殖やす」ということが根付いています。
日本では高齢化が進み、徐々に公的年金に頼ることができないようになってきています。その解決策として、働き続けることを選択しているわけです。
資産形成の重要性が叫ばれるようになり、多くの人が自分なりの投資に挑戦しているものの、すでに高齢者の人たち、そしてもうすぐ高齢者になる人たちは、タイムオーバー。選択肢はひとつしかありません。