どの家庭にも程度は違えど地獄はあるものです。一見平穏そうにみえる家庭も、蓋を開けてみれば驚きの事実が露見するかもしれません。今回は、長岡FP事務所代表の長岡理知氏のもとへ相談があった、身に覚えなく多重債務者となっていたSさんの家庭の事例をみていきます。
スマホ「15万円」の分割払いできず…42歳・年収750万円の営業マン、身に覚えなく「多重債務者」となっていた驚愕の真相 (※写真はイメージです/PIXTA)

娘は中学から引きこもり…母娘で異常な被害妄想を抱いていた

Sさんはこの家庭の問題を相談する相手がいなかったようですが、知人を通して弊社に相談にいらっしゃいました。弊社が詳しい話をお聞きして交通整理をし、各方面の専門家を紹介することになりました。

 

話を聴いていくと、Sさんの娘さんが小学5年生の頃から引きこもりになっていることがわかりました。中学はほとんど行かないままで高校には進学しませんでした。17歳のいまもマンションの自室に籠っています。Sさんとの会話は数年間一言もありません。

 

自宅のなかは掃除や整理がなされずごみ屋敷状態だということも。妻は片付けが苦手のようです。パートで働きに出るものの、短ければ半日、長くても1ヵ月で辞めてしまう。勤め先で金銭の貸し借りのトラブルを起こしたこともあるとのこと。そのときは「同僚に貸したお金を返してもらえなくなった」とSさんは聞いたとのことですが、実際にはわかりません。

 

深刻なのは妻と娘が共依存し、Sさんに対して激しい被害妄想を抱いていることです。クレジットカードを勝手に作ってなにを買ったのかとSさんは疑問に思っていましたが、おそらくなにも買っていない、というのが弊社の見立てです。最初は生活費が足りなくなりキャッシングなどを使ったのです。翌月にその返済がきつくなり、カードを使って返済する。カードの枠が無くなりそうなので新しいカードを作る。さらに返済が苦しくなる。その繰り返しで借金が膨らむのです。

 

借金返済に行き詰まると冷静な判断はできなくなるものです。「本人に無断でカードは作れるものなのでしょうか」Sさんが言います。もちろん本来は犯罪行為ですが不可能ではありません。配偶者ならできるでしょう。ともかく、Sさんの妻は生活費の管理ができなくなりクレジットカードの自転車操業を始めたのだと想像がつきます。それは珍しくないことですが、もっと根本にある問題に目を向けたほうがいいと思われます。

 

母娘の共依存、その結果なのか娘の引きこもり、妻の家庭運営の極度の不器用さ、そしてSさんの無関心、コミュニケーションの無さ、Sさんへの被害妄想……これらの問題です。