最新の家計調査から考える、年金のほかに必要な貯蓄額
たとえば最新の家計調査である、2021年度の数値をみていくと、65歳以上・無職の夫婦世帯の実収入は23万6,576円。そのうち夫婦の年金は21万5,603円。それに対し実支出(税金や保険料など含む)は25万5,100円。つまり毎月の赤字額は1万8,524円。1年の不足額は22万2,288円、30年の不足額は666万8,640円となります。さらに人生100年時代といわれていますから、夫婦で100歳まで生きるとなると、800万円ほどあれば十分という計算です。
ただここで考えたいのが、定年年齢。多くの会社で定年以降も働ける環境が整いつつあるものの、定年自体は「60歳」という会社が大半。つまり60歳で「働くか」、それとも「働かないか」を決めることになるわけです。では「働かない」を選択した場合、いったいいくら必要になるのでしょうか。
同じく家計調査で世帯主60歳以上の無職世帯に注目してみると消費支出は22万9,456円。毎月23万円ほどの生活費が必要であることから、年金をもらうまでの無収入の5年間、1,380万円あればいいということになります。
家計調査から考えると、2180万円の貯蓄があれば、60歳の定年退職とともに現役を引退し、65歳から年金をもらい、100歳まで生きていける、ということになります。
最低限の暮らしで100歳まで生きることを考える
さらにもうひとつ、生活保護費から老後資金を考えてみましょう。支給される保護費は、地域や世帯の状況によって異なりますが、老後の最低限の生活費の基準といえるでしょう。
東京都23区の場合、60~64歳2人世帯の最低生活費は18万7,490円、74歳までは18万3,920円、75歳以上は17万6,380円です。
【東京都23区の2人世帯の生活保護費の目安※2023年1月現在】
◆60~64歳:18万7,490円
生活扶助基準額12万3,490円、住宅扶助基準額6万4,000円
◆65~74歳:18万3,920円
生活扶助基準額11万9,920円、住宅扶助基準額6万4,000円
◆75歳以上:17万6,380円
生活扶助基準額11万2,380円、住宅扶助基準額6万4,000円
借家の場合は718万6,150円、持ち家の場合は462万6,150円。これだけの貯蓄があれば年金がなくても、60歳で定年退職したのち、100歳まで夫婦で最低限の生活ができる、ということになります。
もちろん、持ち家であっても修繕費が必要になったりと、実際にこれだけの貯蓄だけで生きていけるというわけではありません。また医療や介護など、不測の事態にも対応できる貯蓄額とは言い難いでしょう。あくまでも「人間としての最低限の暮らし」を考えたらというものであり、少しの余裕もない金額です。
結局は、一人ひとりがどのように生きていきたいかによって、老後の生活費用は異なります。現役後の理想の暮らしを具体的にイメージすることが、老後に向けての資産形成の第一歩です。