日本の「総年金支給額」…20年でとんでもない規模まで拡大
いまから20年ほど前の2001年、年金受給者(延べ人数)は4,286万人、重複のない受給者数は3,752万人、受給総額40兆7,840億円でした。その後、高齢化の波は加速し、2007年には高齢化率が21%を超え、日本は「超高齢社会」に突入しました。当時の年金受給者は5,496万人、重複のない受給者数は4,163万人、受給総額は47兆6,670億円。たった7年で7兆円も増えたのです。
そして2021年、年金受給者(延べ人数)は4,286万人、重複のない受給者数は4,954万人、受給総額56兆0,674億円。この20年あまりで受給総額は15兆円も増えたことになります。そこで気になるのが「日本の公的年金は崩壊する」という噂。多くの専門家は「杞憂だ」と一蹴します。
日本の公的年金は、現役世代が納める保険料で、その時々の高齢者世代に年金を給付する、いわゆる「賦課(ふか)方式」。ただ少子高齢化が進むと、現役世代からの保険料が少なくなり、制度を持続させるのが難しくなります。そのため「年金積立金」で不足分を補う仕組みになっています。
この年金積立金は、現役世代が納めた年金保険料のうち、年金の支払いなどに充てられなかったもの。これを年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用。元本は100年の年金の財政計画のなかで、将来世代の年金給付を補うために使われるとしています。
およそ四半期ごとに運用状況について報道され、2022年7~9月期は1兆7220億円の赤字、赤字は3期連続でリーマンショック以来と発表されました。赤字のときのほうが大きく報道される傾向にあるので、「年金、大丈夫?」と不安になる人も多いでしょうが、ただ世界的にみても運用はうまくいっているほうだといい、とりあえず、「100年は年金制度が崩壊」ということはなさそうです。
ただし「いまの水準の年金を手にできる」と約束しているわけではありません。「100年安心」と銘打った公的年金は、年金支給額を削減することで「年金財政は100年安心」といったもの。破綻する年金生活者が増えたとしても、「年金は100年安心」というわけです。
急激な物価高で生活苦の年金生活者が増えるなか、現行の年金制度の見直しも検討されていますが、年金増額は望み薄。さらに現役世代の負担が増えることは確実視されています。全世代が苦境に陥るなか、「年金に頼らず生きていく」ための自己防衛しか道は残されていないのです。