自動車の減価償却の基本的なしくみと計算方法【税理士が解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

自動車の減価償却は、よく「節税」の手段といわれることがあります。しかし、どのような意義・メリットがあるのか、必ずしも正しい理解がされているとはいえません。本記事では、大型トラック運転手など運送業界で働いた経験をもち、現在は公認会計士・税理士としてスタートアップから上場企業まで多彩な企業の税務顧問として活躍している古谷洋二郎氏が、自動車の減価償却の基本的なしくみについてわかりやすく解説します。

目次
1.減価償却とは
2. 自動車の償却期間(法定耐用年数)
2.1. 償却期間(法定耐用年数)の基本的な考え方
2.2. 自動車の法定耐用年数
2.2. 計算は「月割り」で行う
3.償却方法は「定額法」と「定率法」
3.1. 定額法
3.2. 定率法
3.3. 自動車は法人と個人事業主とで償却方法が異なる
3.4. 自動車の減価償却の計算例
4.中古車は最短1年で減価償却できる
4.1. 中古車の償却期間(耐用年数)の計算方法
4.2.「3年10ヵ月落ちの中古車」なら 1年で全額経費になる
5.償却期間中の買い替えの処理
6. 【参考】トレーラーハウス投資による節税とは
まとめ

1.減価償却とは

減価償却とは、車などの資産の購入費用(取得価額)を、資産の利用できる期間(耐用年数)に分割して費用計上することです。

 

ある程度長期的に利用する資産は、使用するうちに、資産価値が目減りしていきます。このような場合、購入時に一括で費用に計上するより、目減りする毎に費用にする方が実態に合います。

 

そこで、定められたルールが、減価償却です。減価償却においては、価値の減少分を規則的な方法により費用として処理します。そして、減価償却費の額は、「償却期間(法定耐用年数)」と「償却方法」によって決まります。

 

2. 自動車の償却期間(法定耐用年数)

2.1. 償却期間(法定耐用年数)の基本的な考え方

まず、償却期間(法定耐用年数)の一般的・基本的な考え方について解説します。「耐用年数」とは、「使える期間」という意味です。

 

先述した減価償却の理屈、すなわち、「資産価値が下落した分を費用として計上する」という考え方からすれば、本来、使える期間(耐用年数)は個々の資産ごとに判断するのが望ましいことになります。しかし、実際に個別判断するのは難しく、実用的ではありません。

 

そのため、実務上は「法定耐用年数」を利用します。

 

法定耐用年数は、国が定めた耐用年数であり、資産の種類や用途により決められており、国税庁が定めた「主な減価償却資産の耐用年数表」で確認することができます。

 

耐用年数が短いほど、1年度あたりに計上できる減価償却費は大きくなります。したがって、早く経費を出したい場合は耐用年数が短い方が有利、ということになります。

 

また、中古資産の場合は、償却期間は法定耐用年数より短くなります。詳細は後述します。

 

2.2. 自動車の法定耐用年数

自動車は「車両・運搬具」に該当し、法定耐用年数は以下の通り定められています。

 

【一般用(特殊自動車・運送事業用等以外)】

  • 小型自動車(総排気量0.66ℓ以下):4年
  • 貨物自動車(ダンプ式):4年
  • 貨物自動車(ダンプ式以外):5年
  • 報道通信用:5年
  • 2輪・3輪自動車:3年
  • その他:6年

 

【運送事業用・貸自動車用・自動車教習所用】

  • 小型車(貨物は積載量2t以下、その他は総排気量2ℓ以下):3年
  • 大型乗用車(総排気量3ℓ以上):5年
  • 乗合自動車:5年
  • 被牽引車等:4年
  • その他:4年

 

2.2. 計算は「月割り」で行う

減価償却の計算は月割でするという点に注意が必要です。事業供用日(資産を利用し始めた日)が期の途中であれば月割で計算しなければなりません。

 

「月割」の計算においては、1ヵ月未満の端数については1ヵ月と計算します。したがって、たとえば、利用開始日が「12月1日」でも「12月31日」でも、「12月から」とカウントします。

 

したがって、よくみられるような、期末になって「決算対策」と称して自動車を購入する行為は、せいぜい1ヵ月分しか減価償却費を計上できないので、おすすめできません。

 

3.償却方法は「定額法」と「定率法」

次に、償却方法には、大きく分けて「定額法」と「定率法」の2つがあります。

 

どちらも購入価額(取得価額)に「償却率」を掛けて計算します。償却率は「償却方法」と、上述した「耐用年数」により決まっています。

 

3.1. 定額法

定額法は、毎期、一定額を減価償却する方法です。定額法の計算式は以下の通りです。

 

減価償却費=資産の購入代金 ÷ 償却期間(法定耐用年数)

 

これにより、定額法による償却率は、

 

1 ÷ 償却年数(小数点以下第4位を切り上げ

 

ということになります。要注意なのは、小数点以下第4位は「四捨五入」ではなく「切り上げ」ということです。

 

たとえば、償却期間が10年であれば「0.1」、15年であれば「0.667」ということです。

 

定額法は、資産の購入費用を各期に均等に割り振るので、計算がシンプルという特徴があります。ただし、早期に大きな額を償却することはできません。

 

3.2. 定率法

これに対し、「定率法」は、毎期、同じ率の金額を減価償却する方法です。初年度に多く減価償却でき、年が経つにつれ減価償却する額が少なくなっていきます。

 

したがって、初年度に多く費用計上したい場合は、定率法が有利となります。

 

定率法の計算式は以下の通りです。

 

減価償却費=期首の未償却残高×償却率

 

そして、定率法の償却率は以下の通りです。

 

定額法の償却率×2

 

ただし、定率法だけでは期間内に全部を償却しきることができません。そこで、定率法で計算した額が「償却保証額」を下回った場合には、そこから「定額法」を使うことになります。

 

「償却保証額」とは、定率法で最低限計上すべき償却額を意味し、「取得価額×保証率」で決まります。「保証率」は耐用年数に応じて設定されており、詳しくは国税庁「平成23年12月改正 法人の減価償却制度の改正に関するQ&A」で確認することができます。

 

3.3. 自動車は法人と個人事業主とで償却方法が異なる

資産種類により償却方法は決まっていますが、車の場合、法人と個人事業主とで取り扱いが異なります。原則は以下の通りです。

 

  • 法人:定率法
  • 個人事業主:定額法

 

ただし、上記はあくまで原則なので、届出をすれば、好きなほうを選択することができます

 

また、個人事業主で、自家用と事業用の両方に使っている場合は、事業用で使っている割合についてのみ、減価償却の処理を行うことができます。「家事按分」といいます。

 

償却期間中に減価償却の計算方法を変更する場合は、事業年度の前日までに税務署に提出する必要があります。また、新設法人、開業したばかりの個人事業主は、確定申告書の提出期限(個人事業主は3/15)までに税務署に提出する必要があります。

 

一度変更すると2年間は変更できない点にも注意が必要です。

 

3.4. 自動車の減価償却の計算例

下記の例で、減価償却費を計算します。

 

  • 3月決算法人
  • 小型貨物自動車(法定耐用年数3年)
  • 車の購入代金(取得価額)360万
  • 2022年7月1日利用開始

 

購入年度における減価償却費は90万円、期末(2023年3月末)における帳簿価額は270万円になります。

 

すなわち、計算式は以下の通りです。

 

  • 減価償却費=120万円 × 利用期間9ヵ月(2022年7月~2023年3月)/会計年度12ヵ月(2022年4月~2023年3月)=90万円
  • 期末の帳簿価格=360万(取得価額)-90万(減価償却費)=270万円

 

4.中古車は最短1年で減価償却できる

自動車の減価償却についての原則的なルールについては上記の通りですが、あくまでも新車を前提としたものです。

 

それでは、中古車の計算方法はどうでしょうか。よく、中古車を購入することが「節税」「決算対策」として有益であるといわれます。特に、「3年10ヵ月落ち」の中古車は1年で償却できるとされています。したがって、これらの点に解説を加えておきます。

 

4.1. 中古車の償却期間(耐用年数)の計算方法

中古車の耐用年数は新車よりも短く設定されています。なぜなら、中古車はすでに利用しているので、新車より価値が減少していると考えられるためです。

 

中古車の耐用年数は、下記の通りです。

 

中古車の耐用年数=(法定耐用年数ー経過年数)+(経過年数×0.2)

 

たとえば、2年(24ヵ月)落ちの中古車の場合、耐用年数は以下の通りです。

 

(6年(法定耐用年数)-2年)+(2年×0.2)≒4年4ヵ月

 

1年未満切り捨てのため、耐用年数は「4年」となります。

 

新車の耐用年数6年と比べ、全額経費計上が完了する期間が2年短いことになります。

 

4.2.「3年10ヵ月落ちの中古車」なら 1年で全額経費になる

車の購入費用を1年で全額経費にしたい、という場合は3年10か月落ちの中古車がおすすめです。

 

すなわち、3年10か月落ちの中古車の場合、耐用年数の計算は以下の通りです。

 

(6年(法定耐用年数)-3年10ヵ月)+(3年10ヵ月×0.2)≒2年11ヵ月

 

1年未満切り捨てのため、耐用年数は「2年」となります。そして、耐用年数2年の定率法償却率は「1.000」、つまり全額が減価償却費になります。

 

ただし、1つの年度で全額を減価償却費として計上するためには、期首に購入しなければならない点にご注意ください。前述の通り、減価償却費は月割で計上しなければならないからです。

 

たとえば、3月決算法人の場合は4月中に購入して、利用開始する必要があります。

 

したがって、中古車の購入は、駆け込み的な「決算対策」や「節税」には向きません。また、いうまでもないことですが、会社の事業に必要もないのに自動車を購入するのは単なる経費の無駄遣いに終わってしまいます。あくまでも、計画的かつ慎重に活用する必要があります。

5.償却期間中の買い替えの処理

では、車の償却期間中に車を買い替える場合はどのように処理すべきでしょうか。

 

この場合も、売却金額と、売却時点まで減価償却が完了した「帳簿価格」との差額が「売却損益」となります。

 

法人の場合、売却益は利益に含まれますので、税金対象となります。

 

個人事業主の場合、売却益が50万円を超えていれば「譲渡所得」として納税申告が必要になります。

 

6. 【参考】トレーラーハウス投資による節税とは

最近、法人向けの方法として注目されている、減価償却のしくみを利用した「節税」のなかに、「トレーラーハウス投資」があります。

 

トレーラーハウスとは、タイヤの付いた家のようなものです。「建築物」と認定されなければ「被牽引車」として扱われ、償却期間は4年です。定率法を使えば、初年度に購入金額の50%の減価償却費を計上できます(2年目は25%、3年目・4年目は12.5%が計上されます)。

 

1,000万円以下の投資額で、短期間で多額の減価償却ができ、収益性もある、という投資です。たとえば、トレーラーハウスを購入し、宿泊事業者へレンタルして賃料収入を得るケースです。

 

ただし、トレーラーハウスの状態(階段・ポーチ・ベランダがある、車輪が外されている等)によっては車とみなされず「建築物」とされてしまうこと、収益を上げられないリスクもあること等に注意が必要です。

 

まとめ

車の減価償却方法は定率法、定額法の2種類あり、購入初年度に減価償却費を多くしたい場合は、定率法が有利です。そこに着目して、「節税」の効果があるといわれることがあります。

 

また、3年10か月落ち中古車の場合、1年で全額減価償却できます。

 

ただし、減価償却は「月割り」で行われるため、決算期末になって自動車を購入する形での「節税」「決算対策」はおすすめできません。

古谷洋二郎公認会計士事務所 代表
公認会計士・税理士

北海道旭川市出身。旭川龍谷高校中退。

18歳で上京し、大型トラック運転手など運送業界に約10年従事。

30歳で会計士を志し、33歳で試験合格。

合格後は有限責任監査法人トーマツにて会計監査、上場準備企業の支援業務等に従事。

2019年、古谷洋二郎公認会計士事務所を開設。

経営助言や資金繰り管理など、成長支援を重視した税務顧問として活動。

スタートアップから上場企業まで幅広くサポート。


●古谷洋二郎公認会計士事務所
https://f-acct.com/

著者紹介

連載減価償却とは?計画納税と資金繰り改善のため必要かつ有益な基礎知識

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