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法人・個人事業主が事業用に中古車を購入した場合、減価償却の処理が必要となります。中古車は新車と異なり、1台1台についてそれぞれ償却期間(耐用年数)を計算しなければなりません。また、中古車を購入すると「節税」になるといわれることがありますが、どういうことでしょうか。本記事では、大型トラック運転手など運送業界で働いた経験をもつ公認会計士・税理士の古谷洋二郎氏(古谷洋二郎公認会計士事務所代表)が、中古車の減価償却の計算方法、耐用年数、「節税」効果等について、新車との違いにも触れながら解説します。

目次
1. 車の減価償却とは
2. 中古車の減価償却の計算方法は4通り
2.1. 定額法
2.2. 定率法
2.3. リース期間定額法
2.4.「1台30万円未満」なら「少額減価償却資産の特例」が使える
3. 耐用年数が短いほど「節税」の効果がある
3.1. 新車の耐用年数(法定耐用年数)
3.2. 中古車の耐用年数の計算方法
4. 中古車の購入は「4年落ち」がお得とされているのはなぜか?
5. 中古車を減価償却する場合の5つの注意点
5.1. 取得価額の計算に含まれるもの・含まれないものがある
5.2. 取得のタイミングによってその期の減価償却費の額が異なる
5.3. 車種によっては否認のリスクがある
5.4. 改造・修理したら耐用年数が長くなることも
5.5. 個人事業主は「家事按分」が必要
まとめ

1. 車の減価償却とは

1. 車の減価償却とは
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減価償却は、自動車等の事業用資産(減価償却資産)を購入した場合に、その購入代金額を複数年に分けて費用化していく会計上の処理です。

 

自動車のような事業用資産は、複数年にわたって使用してそこから収益を生んでいくので、購入代金もその実態に即して複数年に分けて費用計上していくことにしたものです。

 

その「複数年」の期間は法令によって「耐用年数」として決められています。耐用年数は、ごく大ざっぱにいえば、長持ちするものほど長く、消耗が早いものほど短くなっています。したがって、新車の場合は耐用年数が長く、中古車の場合は短くなっています。詳しくは「3. 耐用年数が短いほど『節税』の効果がある」で解説します。

 

耐用年数(償却期間)が短いほど、単年度あたりに計上する減価償却費は大きくなります。したがって、いわゆる「節税」を考える場合、新車より中古車を選んだほうが「お得」ということです。

 

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2. 中古車の減価償却の計算方法は4通り

2. 中古車の減価償却の計算方法は「4通り」
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中古車の減価償却の計算方法は以下の4通りが考えられます。

 

【中古車の減価償却の計算方法】

  1. 定額法
  2. 定率法
  3. リース期間定額法
  4. 少額減価償却資産の特例

 

このうち、「定額法」「定率法」「リース期間定額法」については新車にも中古車にも使えます。ただし、実際には「定率法」が好まれます。これに対し「少額減価償却資産の特例」は1台30万円以下の資産に用いられる方法なので、事実上、中古車に限られることになります。それぞれについて解説します。

 

2.1. 定額法

定額法は、毎年度、均等に一定額を減価償却していく方法です。定額法の計算式は以下の通りです。

 

減価償却費=取得価額÷耐用年数

 

また、定額法の償却率は以下の通りです。

 

1÷耐用年数(小数点以下第4位切り上げ)

 

たとえば、耐用年数が6年の場合、計算結果は「0.1666…」ですが、償却率は「0.167」になります。他方、耐用年数が3年の場合、計算結果は「0.3333…」となりますが、償却率は「0.334」です。

 

減価償却が終わったら貸借対照表にはその資産の価額を「1円」と記載します。減価償却後も事業用の資産として使われていることを示すためです。

 

2.2. 定率法

定率法は、毎年度、一定の「率」を減価償却していく方法です。早い年度ほど減価償却費が最も大きくなるので、定額法よりも定率法のほうが好まれる傾向にあります。

 

定率法の計算式は以下の通りです。

 

減価償却費=期首の残存価額(未償却残高)×償却率

 

また、定率法の償却率は以下の通りです。

 

定額法の償却率×2

 

ただし、定率法の計算をすると、永遠に「ゼロ」になりません。そこで、「償却保証額」という数値を使います。定率法の計算結果が「償却保証額」を下回ったら、それ以降は、残りの年度に均等に振り分けて計上します。

 

そして、定額法の場合と同様、減価償却が終わったら貸借対照表に「1円」だけ残します。

 

償却保証額は「取得価額」に、耐用年数に応じて決まった「保証率」をかけて算出します。保証率は国税庁のHPで公表されています。

 

2.3. リース期間定額法

「リース期間定額法」は、「ファイナンス・リース」、すなわち、リース料を支払い終えたら車両を自分のものにできるタイプのリースを利用した場合に適用される方法です。ファイナンス・リースは、一度に大きな額のキャッシュが出ていくのを避けることができるので、新車だけでなく、中古車についても広く行われています。

 

本来、リースは他人の所有物の「賃貸」なので、減価償却は問題にならないはずです。しかし、ファイナンス・リースは実質的に分割払い購入と同じなので、所定の要件をみたす場合には減価償却の処理が必要となるのです。それが「リース期間定額法」です。

 

リース期間定額法の計算式は以下の通りです。

 

(リース資産の取得価額-残価保証額(※))÷リース期間の月数)×その事業年度におけるそのリース期間の月数

※ 残価保証額:リース期間終了時の資産価値の目安となる額。実際の処分価額がこれに満たない場合、借り手が不足額を貸し手に支払わなければならない。

 

2.4.「1台30万円未満」なら「少額減価償却資産の特例」が使える

最後に、「1台30万円未満」の中古車ならば、「少額減価償却資産の特例」によって、一気に全額を償却することができます。耐用年数は関係ありません。

 

少額減価償却資産の特例は、青色申告をしている「中小事業者」が、「1個30万円未満」の資産を年間合計300万円まで全額一気に償却できるという特例です。「中小事業者」の要件は以下の通りです。

 

【中小事業者の要件】

  • 常時使用する従業員数が500人以下(個人事業主は1,000人以下)
  • 直近3事業年度の平均所得金額が年15億円以下
  • 資本金・出資金の額が1億円以下(法人)
  • 資本金・出資金の額が1億円超の法人・その子会社から2分の1以上の出資を受けていない(法人)
  • 大規模法人(資本金5億円以上等)から3分の2以上の出資を受けていない(法人)

 

3. 耐用年数が短いほど「節税」の効果がある

3. 耐用年数が短いほど「節税」の効果がある
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中古車を購入すると「節税」の効果があるといわれることがあります。それは、中古車は新車よりも耐用年数が短いので、早期に、大きな減価償却費を計上できるからです。

 

3.1. 新車の耐用年数(法定耐用年数)

中古車の耐用年数は、新車の耐用年数(法定耐用年数)をもとに計算されます。そこで、まず、「法定耐用年数」について解説します。

 

法定耐用年数は、用途、自動車の種類によって決まります。長持ちするものほど法定耐用年数が長く、消耗が早いものほど短く設定されているというイメージを持っていただければけっこうです。以下の通りです。

 

■「一般用」の車両・運搬具の法定耐用年数

細目

耐用年数(年)

自動車(2輪・3輪自動車を除く)

-

 小型車(総排気量が0.66リットル以下のもの)

4

 貨物自動車

-

  ダンプ式のもの

4

  その他のもの

5

 報道通信用のもの

5

 その他のもの

6

2輪・3輪自動車

3

自転車

2

リヤカー

4

国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」より

 

■「運送事業用・貸自動車業・自動車教習所用」の法定耐用年数

細目

耐用年数(年)

自動車(2輪・3輪自動車を含み、乗合自動車を除く)

-

 小型車(貨物自動車にあっては積載量が2トン以下、その

他のものにあっては総排気量が2リットル以下のもの)

3

 大型乗用車(総排気量が3リットル以上のもの)

5

 その他のもの

4

乗合自動車

5

自転車、リヤカー

2

被けん引車その他のもの

4

国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」より

 

 

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3.2. 中古車の耐用年数の計算方法

中古車の耐用年数の計算には、通常、「簡便法」という方法を使います。これは、法定耐用年数を経過したか否かによって異なります。

 

3.2.1. 法定耐用年数を経過していない場合

法定耐用年数を経過していない場合の計算式は以下の通りです。

 

耐用年数=(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×0.2)

 

計算した結果、1年未満の端数が出た場合は「切り捨て」です。また、2年未満になった場合は一律で「2年」と扱います。したがって、中古車の耐用年数は最短で2年ということになります。

 

耐用年数2年の場合、定率法を用いると、実質、1年で減価償却が終わります。なぜなら、耐用年数2年だと定率法の償却率は「1.000」のためです。

 

たとえば、「3年落ち」の中古で「一般用」の普通乗用車であれば、以下の通りです。

 

(6年(法定耐用年数)-3年)+(3年×0.2)=3.6年⇒3年(端数切り捨て)

 

3.2.2. 法定耐用年数を経過した場合

次に、法定耐用年数を経過した中古車の耐用年数の計算式は以下の通りです。

 

耐用年数=法定耐用年数×0.2

 

この場合についても、計算の結果、1年未満の端数が出たら切り捨て、2年未満の場合はすべて「2年」と扱います。したがって、たとえば「10年落ち」中古の「一般用」の普通乗用車は以下の通りです。

 

6年(法定耐用年数)×0.2=1.2年⇒2年

 

耐用年数が2年なので、減価償却の計算に定率法を用いれば1年で償却できます。

 

法定耐用年数を経過した中古車であれば、「7年落ち」も「10年落ち」も「13年落ち」も同じ扱いがされるということです。自動車の法定耐用年数は最長でも6年なので、法定耐用年数を経過した中古車はすべて1年で償却できます。

 

4. 中古車の購入は「4年落ち」がお得とされているのはなぜか?

4. 中古車の購入は『4年落ち』がお得とされているのはなぜか?
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自動車で減価償却による「節税」を考えるなら、「4年落ち」の中古車が最も効率がよいといわれます。どういうことなのか、説明します。

 

「4年落ち」というのは、厳密にいえば「3年10ヵ月落ち」です。これは、耐用年数が「2年」、つまり減価償却の計算に定率法を使えば1年で償却できる最短の数値です。

 

具体的に計算してみましょう。

 

(6年(法定耐用年数)-3年10ヵ月)+(3年10ヵ月×0.2)=約2年11ヵ月⇒2年(端数切り捨て)

 

このように、3年10ヵ月だと、計算結果が約2年11ヵ月になるので、耐用年数が2年となり、定率法により実質1年で償却できることになります。

 

なお、1ヵ月短い「3年9ヵ月落ち」だと計算結果が3年を超えてしまうので、耐用年数は「3年」、償却率は「0.667」となります。

 

このようなわけで、中古車を購入して減価償却による「節税」を考えるのであれば、「3年10ヵ月落ち」以上のものにすることをおすすめします。ただし、1年で全額の償却を終えたいのであれば、期首に購入することをおすすめします。その理由については「5.2. 取得のタイミングによってその期の減価償却費の額が異なる」で解説します。

 

5. 中古車を減価償却する場合の5つの注意点

5. 中古車を減価償却する場合の5つの注意点
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最後に、中古車を減価償却する場合の5つの注意点について解説します。

 

  1. 取得価額の計算に含まれるもの・含まれないものがある
  2. 取得のタイミングによってその期の減価償却費の額が異なる
  3. 車種によっては否認のリスクがある
  4. 改造・修理したら耐用年数が長くなることも

 

これらの注意点について、対応を誤ると、減価償却費の計算違いの可能性、「節税」できなくなる可能性、そして、最悪の場合には減価償却費が否認されてしまうこともありうるので、必ず押さえておいてください。

 

5.1. 取得価額の計算に含まれるもの・含まれないものがある

減価償却の計算のスタートラインになるのが「取得原価」です。車両本体だけでなく、他に所定のものが含まれます。中古車の場合は以下の通りです。最後の2つが中古車特有のものです。

 

【中古車の取得価額に含まれる主なもの】

  • 車両本体価格
  • 付属品(カーナビ、カーステレオ、エアコン、タイヤホイール等)
  • 納車費用
  • 未経過分の自動車税
  • 未経過分の自賠責保険料

 

最後の2つについては、自動車税と自賠責保険は既に前所有者が1年分を支払っており、その未経過分が購入代金に含まれているからです。

 

なお、自動車取得税(50万円以上で購入した場合)、検査登録の費用、ナンバープレートの費用については、取得価額に含めなくても構いません。その年度に一気に費用計上してよいということです。

 

これに対し、中古車の取得価額に含まれないものは、以下の通りです。減価償却の対象にならないので、全額を取得した年度の費用に計上することになります。

 

【中古車の取得価額に含まれないもの】

  • 自動車重量税
  • 車検費用(車検整備付きの場合)

 

5.2. 取得のタイミングによってその期の減価償却費の額が異なる

減価償却の計算は「月割り」で行われます。これは「定額法」「定率法」いずれも変わりません。中古車を事業で利用し始めた「事業供用日」が事業年度の途中だと、月割で計算しなければなりません。

 

たとえば、3月決算の法人で期首の4月に購入して利用開始した場合には1年分をそっくり減価償却費に計上できますが、3月に購入した場合は1ヵ月分しか計上できません。残りは次年度に計上することになります。

 

したがって、「4. 中古車の購入は『4年落ち』がお得とされているのはなぜか?」で解説した4年落ちの中古車を購入して節税」というスキームは、決算期ぎりぎりでは意味がないことになります。納税計画の見地からは、取得のタイミングには十分に注意する必要があるということです。

 

5.3. 車種によっては否認のリスクがある

車種によっては否認のリスクがあるので、注意が必要です。たとえば、「4年落ちのフェラーリ」を購入して代金の全額を1年で減価償却しようとした場合、税務署から、指摘を受ける可能性があります。

 

減価償却費はあくまでも「費用」です。そして、費用として認められるかどうかは、「収益を得るのに結びつくか」によって決まります。それについて合理的な説明ができることが重要です。

 

単なる「社長の趣味・好み」というのでは認められません。事業活動に実際に使用している実態があること、私用には一切使用していないこと(自家用車が別にある)等、シビアに判断されることになります。

 

5.4. 改造・修理したら耐用年数が長くなることも

中古車を改造・修理した場合、耐用年数が長くなることがあります。中古車の資産価値を高めたことになるので、通常の中古資産の耐用年数を計算するのに用いられる簡便法は使えなくなってしまうのです。

 

修理・改良等によって中古車の価値を増加させ、または耐久性を高める場合は「資本的支出」と呼ばれます。資本的支出が新車価格の50%を超えたら、新車と同じ「法定耐用年数」によって償却しなければなりません。

 

また、そこまででなくても、資本的支出がその中古車の取得価額の50%を超えた場合には、以下の計算式によって耐用年数を算出します。

 

(取得価額+資本的支出)÷{(取得価額÷簡便法による耐用年数)+(資本的支出÷法定耐用年数)}

 

5.5. 個人事業主は「家事按分」が必要

個人事業主の場合、自動車は自家用と事業用を兼ねて使用していることが多くなっています。この場合には、事業用に使った割合を示すことができれば、それに応じた減価償却費等の経費を計上できます。これを「家事按分(かじあんぶん)」といいます。

 

そのためには、根拠となる資料を揃えておく必要があります。たとえば、使用した日、目的地、同行者、走行距離等の記録を残しておくことです。

 

まとめ

まとめ
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中古車の減価償却は、購入代金等の取得価額を「定率法」または「定額法」のいずれかによって耐用年数に応じて費用計上していきます。耐用年数の計算方法は新車の「法定耐用年数」を経過しているか否かにより異なります。

 

中古車は新車よりも耐用年数が短く、「定率法」を用いれば最短1年で償却が完了します。そこに着目して「4年落ち」以上の中古車の購入が「節税」になるといわれることがあります。ただし、年度の途中で購入した場合には減価償却費は「月割り」で計上することになるので、注意が必要です。

 

中古車の減価償却については、新車と異なる点や、中古車特有の注意点がありますので、正確な処理を行うには、本記事で解説したことを押さえたうえで、税理士等の専門家に相談することをおすすめします。

 

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