「老後は安泰」といわれていた団塊の世代が定年を迎えた現在、蓋を開けてみると「生活保護受給者の半数は65歳以上の高齢世帯」という非常に残酷な現実が待っていました。現役時代に懸命に働き、日本経済の発展に大きく貢献した彼らの現状をみていきましょう。
「生活保護受給者」の半数は65歳以上の高齢者…老後に期待していた「団塊の世代」の残酷すぎる現実【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

老後まで時間がある人はiDeCo、ない人は年金の繰り下げ受給を検討

これから老後に対して準備する時間がまだたくさんある現役世代の場合、政府が推進している個人型確定拠出年金(以下iDeCo)の活用などが老後の備えの1つとして考えられます。

 

iDeCoは今年、制度改正があり、これまでの70歳までの受け取りとなっていましたが、75歳まで期間が延長されました。掛け金が所得控除の対象となったり、運用期間中の運用益が非課税であったり、受け取り時には、退職所得控除や公的年金控除の対象となるなど、メリットが多くあります。会社員の人などで、退職金や企業年金がある場合には、受け取り方に注意が必要となりますので、どういった方法で受け取るのか前もって考えておきましょう。

 

年金生活が目前となってしまい、iDeCoのように長期の時間が必要な制度をもう利用できない場合は、公的年金の繰り下げ受給という方法があります。公的年金の繰り下げ受給もこの度、制度が変更され、75歳まで繰り下げることが可能となりました。繰り下げ受給は1ヵ月繰り下げるごとに年金額が0.7%増えることになります。75歳まで最大120ヵ月繰り下げた場合は、84%増やすことが可能となりました。

 

2021年の家計調査(家計収支編)では、年金受給額が約22万円となっています。仮に7年6ヵ月繰り下げて年金を受け取ると、約35.9万円となります。ただし健康保険料などを社会保険料を支払うので、若干少ない額になりますが、先述したゆとりある老後生活費に近い金額になります。

まとめ

昔は年金で悠々老後生活が送られると考える人も多かった時代がありました。それは公的年金も高い水準であったり、企業年金が確定給付年金であったりした時代でした。しかし、現在では公的年金の水準は物価に比べ低くなっていることで、年金だけでは暮らすことが難しくなってきています。

 

さらに年金制度のマクロ経済スライドにより、今後も世の中の物価に比べ年金の受給水準は減少してしまいます。まだ老後といわれるまでに時間のある人は、早いうちから老後資金の準備を始める必要があり、もう準備する時間があまりないという人は、公的年金の繰り下げ受給も考えておく必要があるのかもしれません。

 

これまで繰り下げ受給は70歳までとなっていましたが、制度の改正により75歳まで繰り下げが可能となりました。年金額も最大10年間繰り下げた場合には、84%増やすことができます。75歳から年金を受給したときに不安になるのが、いつまで年金を受け取れるのだろうという寿命についても考えなくてはいけなくなります。

 

繰り下げ受給を考えるときには健康状態も考えながら、生活費についても考えていくことが大切です。老後の生活は、体力の衰えもありますので、やはり早いうちから計画的に準備しておくことをお勧めします。

 

 

 

吉野裕一

FP事務所MoneySmith

代表