「老後は安泰」といわれていた団塊の世代が定年を迎えた現在、蓋を開けてみると「生活保護受給者の半数は65歳以上の高齢世帯」という非常に残酷な現実が待っていました。現役時代に懸命に働き、日本経済の発展に大きく貢献した彼らの現状をみていきましょう。
「生活保護受給者」の半数は65歳以上の高齢者…老後に期待していた「団塊の世代」の残酷すぎる現実【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

年金月20万円でも、生活は苦しい

1947年~1949年生まれの人は「団塊の世代」といわれます。第一次ベビーブームの世代で、戦後、一生懸命働いて日本を大きく成長させてくれた世代でもあります。半面、日本の経済を大きく成長させ、収入がどんどん増える時代を生きてきた世代の人も現在は、70歳を超えています。

 

公的年金で将来は安泰と思われて、貯蓄もほとんどしていないという人もいたのかもしれません。現在の生活保護世帯のうち65歳以上の高齢世帯は、生活保護受給者の半数を超えている状態です。厚生労働省が令和4年6月3日に公表した「生活保護制度の現状について」では、令和4年3月時点の生活保護受給世帯数のうち夫婦とも65歳以上の高齢世帯は91.3万世帯、生活保護受給世帯全体の56%と半数以上が65歳以上の高齢世帯となっています。長寿化となっても生活が苦しいのでは辛いものです。

 

日本では、以降もお金に関する教育はほとんど行われなかったことで、現代の若い世代もお金に関して正しく理解している人は少ないのかもしれません。2021年の総務省の家計調査(家計収支編)では、65歳以上世帯の収入は約20万円、支出は約22万円となっています。2019年に話題になった老後2,000万円不足するという話題と比べると、少し不足分は減少していますが、これは、新型コロナウイルス影響で支出が減っていることも考えられ、今後、経済が正常化したときには、再び支出が増える可能性もあるのではないでしょうか。

 

最近では、円安や資源高により物価も上昇し、支出も増えています。2022年10月の消費者物価指数は2020年を100として、103.7となっています。2011年と比べても約9.7%の物価が上昇しています。

「物価スライド」から「マクロ経済スライド」となった年金制度

生命保険文化センターの調べでは、老後にゆとりある生活を送るのにいくらくらいの費用が必要かという調査によると、平均で36.1万円という結果となっています。現役世代のときに、収入が多かった人は生活水準が高い傾向があり、支出の多い生活を続けていると、年金生活になってから生活水準を落とそうと思っても、急に生活水準を落とすことは難しいです。

 

さらに60代のうちは、貯蓄を取り崩したり雇用延長やアルバイトをしながら生活するという考えの人もいるでしょうが、年齢を重ねると体力の衰えもあり仕事を辞めてしまおうという人も多く、やはり老後に厳しい生活が待っている人は非常に多いと予想されます。

 

年金だけでは生活が厳しくなってきている理由には、物価の上昇だけではなく、現在の年金制度にもあります。日本の年金制度は、2005年4月までは「物価スライド」が採用されていました。「物価スライド」は、物価の変動に連動して年金額が調整されるというものです。

 

しかし、2004年の年金改正により、現在採用されている「マクロ経済スライド」となっています。100年安心の年金制度として長期的な存続を目的に作成され、このなかにこの「マクロ経済スライド」も含まています。「マクロ経済スライド」は、日本人の長寿化や年金加入者の変動を考えて、調整を行うという制度で、物価の変動や賃金の変動に連動して年金額の調整を行ったあと、長寿化や年金加入者数の調整を行うスライド調整率をかけて、年金額が決定されることになります。この仕組みによって、物価が上昇しても年金額が物価と同じように増えずに、増える額が抑えられることになりました。