会社員世帯であれば、「103万円の壁」とか「130万円の壁」など、さまざまな「壁」を意識して頑張っているはず。さらに現役から引退し、年金生活に入ってからも意識しなければならない「壁」が……みていきましょう。
平均年収666万円だった「勝ち組・会社員」年金月18万円も嗚咽…老後の勝敗を分ける「211万円の壁」とは? (※写真はイメージです/PIXTA)

年金211万円と年金212万円…たった1万円の差が10万円超の差になることも

年金については「211万円の壁」というワードを聞いたことがある人もいるでしょう。これは65歳以上の夫婦二人の年金収入のみで生活している世帯が、住民税非課税世帯になるかどうかの境界線。高齢夫婦世帯の主たる生計者=世帯主の年金収入が211万円以下で、配偶者の年金収入が155万円以下であれば、住民税非課税世帯になります。単純計算、年金月18万円ほど、現役時代の年収666万円ほどの人は、「211万円の壁」を超えていると考えられます。

 

この壁を超えるとどうなるのでしょうか。年金211万円と212万円の場合を考えると、まず年金211万円であれば住民税はゼロ。212万円であれば、5,000円程度の住民税がかかります。さらに国民健康保険料と介護保険料も減額の対象。国民健康保険料は多くの自治体で2割・5割・7割のいずれかで減額、介護保険料はほとんどの自治体で、10~13段階で保険料負担額が増減します。それらを加味すると、年金211万円と212万円で10万円以上の差が生じる自治体も珍しくありません。

 

たった1万円の差で、勝ち組会社員が一転、「聞いてないよ……」とむせび泣くことになるわけです。

 

年金受給者の住民税非課税限度額とは、住んでいる地域=「級地」によって異なります。「211万円の壁」が、「203万円の壁」、「193万円の壁」となったりします。自身の住んでいる地域がどの級地となるか、確認をしておきたいところ。

 

年金の壁の話を聞き、何とか年金額を減らそうとする人もいるでしょう。たとえば原則65歳からとなっている年金受給を早める繰り上げ受給を選択すれば、最大30%減額できる可能性も。ただ一度年金受給をスタートすると、その年金額が一生続きます。ただ住民税非課税世帯になるために、繰り下げ受給を選択するのは、リスクでもあります。さらに毎年のように制度改正があるなか対策を講じたところで、あとで無駄になることは大いに考えられます。

 

「211万円の壁」を意識して対策を講じるよりも、自身が老後、どのような暮らしを実現したいのか、そこから逆算してしっかりと準備を進めていくことが得策だといえるでしょう。