看護師の妻と2人の子どもに恵まれ、誰もが羨むエリート会社員生活を送ってきたYさん。そんなYさんには、密かに抱えていた「老後の夢」がありました。しかし、その夢を妻に打ち明けたところ「離婚」を切り出されてしまいます。いったいなにがあったのでしょうか。みていきます。
「定年退職したら離婚してください」…年収1,800万円・大手広告代理店勤務・57歳男性の“老後プラン”に、妻が激怒したワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

妻激怒…切り出した「離婚」の2文字

妻はYさんにこう言います。

 

「あなたにとっては大切な実家でも、私にとっては見知らぬ土地の空き家です。この歳から知らない土地でゼロから再スタートしろと言うのですか?」

 

妻としては当然の反応でしょう。妻も必死に働いて、マンションのローン返済を助けてきたのです。やっと完済が見えてきたとたん、それを売却して築50年の空き家に引っ越すなど信じられません。しかも引っ越し先は東北の田舎町で、自動車がないとスーパーにも行けないような立地です。妻は運転免許を持っていません。趣味のテニスや子供会の活動を通して知り合ったコミュニティの友達と別れ、田舎町で孤独に暮らせと言うのかと、妻は憤ります。

 

予想外の反応に、Yさんは驚いてしまいました。「孤独って、僕もいるじゃないか」

 

しかし、妻はため息とともに続けます。「僕もいるって、若いときから仕事で家にいなかったじゃない。子供の運動会も見に来たことないでしょう。あなたをアテにしなくなって何十年も経つのに、いまさら2人で知らない土地に行く気にはなれません」

 

Yさんは、「でも仕事を頑張ったおかげで、子供達もオール私立で進学させられたじゃないか」と思いましたが、妻の様子に口には出せませんでした。

 

妻は「あなたがそのつもりなら、定年退職したら離婚してください」とカンカンに怒り、「財産分与として半分は頂きますから」と具体的な財産の話までされてしまいました。

一見実現可能に思えるが「Yさんのプラン」だが…

困り果てたYさんは、弊社に相談にみえました。事情を細かく聞いてみると、言葉の節々にアップデートできていない「古い価値観」が見え隠れしています。Yさんはどこかで、「自分が家にも帰らず仕事を頑張ったおかげで、妻子がお金に困らない生活を送ることができた」という自負があるのです。

 

残念ながら、それは現代では「男尊女卑」と言われかねない感性です。もちろんお金を稼いできたのはYさんであるのは事実かもしれませんが、妻も長いあいだ、大学病院で勤め上げてきました。そして、多忙なYさんの手を借りずに1人で子どもたちの学校行事や子供会の役員の仕事をこなしてきました。そんな妻に対するねぎらいの気持ちは、Yさんにはあまりみえません。

 

お金の問題だけを考えると、たしかに問題は見当たりません。9,000万円で購入したマンションは、購入時と同じ9,000万円で売却できる見込みがあります。Yさんだけでも金融資産が約7,000万円あり、退職金は3,000万円が見込まれます。ここに公的年金が加わるため、老後資金は非常に豊かです。

 

したがって、実家のリノベーションに2,000万円を費やしてもリタイア生活にはなんら問題ありません。旅行や趣味に打ち込んで毎日楽しく過ごすことができるでしょう。地方都市ですから、いま住んでいる場所よりも生活費が比較的抑えられるため、よりゆとりが生まれることでしょう。

 

ただし、上記はあくまでも「表面的なお金」だけをみたときのお話です。