40歳で年収1,200万円メーカー勤務のエリート営業マンであるAさん。マイホームを購入し、妻と子1人と幸せに暮らしていた生活が一変、悲劇に陥った事例をみていきます。
「少しでいいから働いてくれないか」妻に懇願…年収1,200万円・40歳エリート営業マンの悲劇【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

40歳で6,500万円のマイホームを全額ローンで購入、完済は75歳

メーカー勤務のAさんは現在48歳。8年前、40歳のときにマイホームを購入しました。土地込みで6500万円という比較的大きな資金計画でした。

 

Aさんは長年独身でしたが、39歳のときに結婚。5歳年下の奥様とは婚活アプリで知り合い、性格が明るいところに好感を持ち結婚を決めたそうです。Aさんは長年ワンルームマンション暮らしだったため、結婚を機にマイホームの購入を決断しました。奥様の強い希望で、奥様のご実家に近い分譲地を購入。坪40万円の土地で決して安くはないものの、奥様からの実家から徒歩5分。子供が生まれたら実家のお母様にも手伝ってもらいやすいという奥様の意見を取り入れることにしました。

 

Aさんはメーカーの営業部に所属しています。新卒で入社してから営業成績は順調だったため、昇進のスピードも同期よりも早くその分年収も上り調子でした。住宅購入時(40歳)の年収は約1,200万円。銀行での審査も問題なく、住宅メーカーの営業マンもこの年収を知ってかなり熱心に売り込んできました。

 

問題は購入時が40歳で、35年返済にすると完済時は75歳になるという点でした。そして自己資金なしで6,500万円(毎月の返済168,700円)を全額ローンにするという点。2,000万円弱の貯蓄は子供が生まれたあとの教育費にしたかったのです。Aさんはこの計画に無理がないか不安に思っていたため、住宅メーカーから紹介されたファイナンシャルプランナーに相談することにしました。

購入時に返済計画を緻密に考えたはずだったが…

ファイナンシャルプランナーはAさんの年収と借入額をみるなり、「まったく問題ないと思います」と言いました。「ほかの方はもっと年収が低くてもローンを返済しているのですよ」とも。Aさんはすっかり気をよくしてしまいます。ファイナンシャルプランナーがAさんにアドバイスしたのは次のようなことでした。

 

・これから子供が生まれると教育費がかかるので、現在の貯蓄額2,000万円は頭金に入れない方がいい

 

・住宅ローンの返済期間は35年にしたほうがいい(住宅ローン減税を多く享受するため)

 

・住宅ローン減税期間(当時は10年間)が終わったら一部繰上げ返済をして返済期間を縮める

 

・数年後にネット銀行でより低金利のローンに借り換えする

 

・退職金も潤沢だがより安心を求めて資産運用をしたほうがいい

 

・奥様は希望どおり専業主婦でも生活できる

 

なるほど、とそのときは納得しました。年収は周囲よりも高いし貯蓄もある程度ある。これからさらに昇進できる予定なので、年収も上がっていくだろう。資産運用をしなくても老後資金は確保できるほど年収は潤沢だとファイナンシャルプランナーが持ち上げるので、Aさんはすっかり安心しきってしまいました。

 

専業主婦で成り立つといわれ、奥様も非常にホッとしました。奥様の結婚の条件は専業主婦でいられることだったのです。こうしてファイナンシャルプランナーにお墨付きをもらったこともあり、住宅購入計画は緻密なものに思えました。