37歳で9,000万円のマンションを購入…誰もが羨むエリートのYさん
Yさんは現在57歳。大手広告代理店に勤務しています。新卒で入社してから順調に昇進を重ね、現在の年収は約1,800万円。若手だったころはちょうどバブル期だったこともあり、ずっと過酷な残業と休日出勤を繰り返してきました。いまの年収は、その頑張りと犠牲に見合ったものだと満足しています。
Yさんが自宅を購入したのは37歳のとき。東北地方の生まれのせいか持家にこだわりがあり、当時で9,000万円のマンションを手に入れました。決して広くはないものの、駅へのアクセスも、住所の「見栄え」もよく満足のいく物件です。購入資金の内訳としては、Yさんが33歳のとき急逝した父親からの遺産相続2,500万円を自己資金とし、残り6,500万円を住宅ローンで調達しました。
当時の住宅ローンの金利は現在よりも高いものの、Yさんは37歳時点でも年収が1,000万円近くあり、妻も大学病院で看護師として働いているため、返済に困ったことはありません。一部繰り上げ返済も何度か実行し、60歳には完済できる予定です。妻の現在の年収は約650万円。世帯年収としては2,450万円あり、前述のように住宅ローンは完済間近。2人の子供も私立大学を出て、すでに自立。誰もが羨むような「エリート会社員生活」です。
しかし、Yさんはあることをきっかけに突如妻から「離婚してください」と言われてしまいました。いったいなぜでしょうか。
それは、Yさんが密かに抱いていた「リタイア後の夢」を妻に打ち明けたことに起因しているようです。
Yさんがどうしても叶えたかった「老後の移住計画」
Yさんの夢は、リタイア後に「東北にある自分の実家で妻と悠々自適に暮らしたい」というものです。Yさんのお父さんは、その土地では有名な建設会社の創業者。Yさんは、父親が苦労して会社を大きくしていく姿を見て育ちました。早朝から深夜まで家族を顧みずに必死に働いていたのです。やがて、無理を重ねたせいか父親が急逝。その後は母親が社長を引き継ぎました。
1人っ子だったYさんは、会社を辞めて事業を継ごうかと悩みました。しかし、母親の強い反対を受けて諦めると、その後、会社は急速に業績が悪化。取引先や従業員に迷惑をかける前にと、ついに廃業してしまいました。
残されたのは、空き家となった大きな実家です。昭和50年代に建てられたその古い日本家屋は、敷地が250坪、建物は延べ床70坪。さらに、立派な庭もついています。Yさんにとってこの家は、父親が命と引き換えに手に入れたものだという思いが強く、空き家となってからもときどき訪れては掃除をし、簡単な修繕を繰り返して維持してきました。父と母の思い出が残るこの実家に、定年退職したらリノベーションをして、妻と一緒に引っ越すというのが夢だったのです。
調べてみると、いまYさんが住む家は高く売却できることがわかりました。その資金をリノベーションと老後資金に充てれば、退職金と貯蓄も合わせてかなりゆとりのある生活になります。きっと妻も喜んでくれるはず、大きな家でのんびりとリタイア生活をするんだ……。しかし、Yさんからそのプランを聞いた妻は喜ぶどころか憤慨してしまいました。