日本の金融教育は世界的にみて圧倒的に遅れていると言わざるを得ません。日本では義務教育における金融教育の授業は中学3年生に1~5時間程度です。しかしながら、例えば英国では小学校の全学年で学習する機会があります。年間2,000名以上の子どもたちに出張授業という形で金融教育プログラムを提供する盛永裕介氏は、子どもたちのお金に関する知識の低さは将来のキャリア選択にも影響すると指摘します。子どもたちが金融リテラシーを身に着けることで将来の選択肢をどのように広げられるか? 実際の事例をもとに解説します。
小学生からスマホでキャッシュレス決済…お金の「価値」の見積りが低い子どもたちが、金融授業で初めて知ったこと (※写真はイメージです/PIXTA)

職業によって給料に差がある理由をみんなで考える

最後に、人生でどのくらいのお金が必要か? どのくらいのお金を稼ぐことができるのか? 大学までの学費がどのくらいかかるのか? などの4択クイズを、クラス対抗の大会形式で競いました。特に生徒の興味を惹いたのは、職業別の年収ランキングを題材としたクイズで、職業によって給料に差がある理由や、働くことの意義や価値について考える時間でした。

 

働くことでお金を稼ぐことができる一方、人生には支出も大きくリスクもある。それを踏まえて、中学生のうちからお金とどのように付き合っていくべきか考えよう、というところで授業を終了しました。

自立した大人になるために必要なお金の考え方とは?

授業後アンケートの集計では、「講義を理解することができた」と回答した生徒は89%、「講義に満足した」と回答した生徒は83%であり、多くの生徒たちが内容を理解できたことがわかりました。

 

また、「講義で理解できたことについて教えてください(自由記述)」の問いに対する回答には、「お金はよく考えて使わないといけない」「お金の役割について理解できた」「お金についてより身近に感じるようになった」といったものが数多くありました。今回の授業の趣旨である「お金の価値を実感する」という点において、概ね達成されたのではないかと考えられます。

 

キャッシュレス化が進む現代社会において、お金の大切さや価値を実感する機会が減少していくことは避けられません。「見えないお金」と向き合うためには、お金の概念や役割、お金が果たす機能を理解すること。社会とお金の関係性、自分とお金の関係性について考え、お金の使い方や価値を理解することが必要であると言えるでしょう。

 

出典:

1)モバイル社会研究所(2022)「【子ども】スマホの持ち始めは年々低年齢化・10歳からスマホデビュー」

2)独立行政法人国民生活センター(2022)「親のカードでオンラインゲームに高額課金」

3)独立行政法人国民生活センター(2021)「「スマホを渡しただけなのに…」「家庭用ゲーム機でいつの間に…」子どものオンラインゲーム課金のトラブルを防ぐには?」,pp.1

4)経済産業省(2020)「キャッシュレスの現状及び意義」,pp.1