不正受給、外国人支援の曖昧な基準…生活保護に向けられる批判の正体
生活保護に関しては、2012年に人気お笑い芸人の親族が生活保護者であることが報じられ、SNSを中心に大炎上。以来、生活保護はたびたびバッシングの対象になっています。
生活保護に関するバッシングは、本当のところ、誤報や思い込みが大きいといわれています。確かに、今日の生活保護バッシングの発端となった前出のお笑い芸人の一件も、正規の手続きを踏んで受給。不正受給ではありませんでした。
生活保護受給者がブランド物を持っているなんておかしい、というよく見られる書き込みも、本物のブランド品か確かめたものではなく、社会に対する不満や怒りが、バッシングしやすいところに向かっている感は否めません。
実際、生活保護の受給に関しては、厳しい資産調査がありますし、ネットでよくいわれているような不正受給が横行しているようなことはありません。ただ不正受給がゼロではないことは確か。厚生労働省によると、2020年、不正受給件数は3万2,090件。総額126億4,659万3,000円で、1件あたり39万4,000円でした。近年、不正受給、不適正受給等の対策を強化していることもあり、件数自体は減少傾向ではあります。
さらに不正受給の内容をみていくと、2020年、最も多かったのが「稼働収入の無申告」で1万5,878件。全体の5割ほどを占めています。続くのが「各種年金等の無申告」で5,678件。全体の18%ほどを占めています。
働くことで収入を得ることは不正受給ではありませんが、生活保護は最低生活費に満たない場合の不足分を補うものですから、手にした収入は適正に申告しなければなりません。また住宅や自動車などは条件を満たせば所有が認められることがありますが、生活保護を受けたら無条件で手放さないといけないと勘違いし、申告せずにいるケースが多いといいます。
【生活保護費の不正受給の内容】
稼働収入の無申告:15,878件
各種年金等の無申告:5,678件
稼働収入の過少申告:3,551件
保険金等の無申告:771件
交通事故に係る収入の無申告:391件
預貯金等の無申告:387件
その他*:5,434件
出所:厚生労働省、社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会(第18回)資料より
*資産収入の無申告、仕送り収入の無申告など
もし生活保護の不正受給が明らかになった場合、生活保護法第78条では、都道府県知事や市町村長がその費用の一部、または全額を徴収することができるとしています。また同85条では、不正の程度にもより、3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されるとしています。不正受給は立派な犯罪なのです。
生活保護については、日本に住む外国籍の人への支給も物議を呼んでいます。前出の厚生労働省の調査によると、日本国籍を有しない被保護人員は全国に6万6,435人。都道府県別にみると、「東京都」が最も多く9,778人。指定都市、中核都市では「大阪市」が最も多く、9,142人となっています。
外国人は生活保護法が直接適用されるわけではありませんが、生活保護と同等の保護を受けることは可能とされています。曖昧な基準から、「外国人が生活保護を受けられるなんておかしい」という声があがりがちです。
不正受給、外国人に対する曖昧な基準……不公平感から、どうしてもバッシングの対象となりやすい生活保護。批判のなかには、正論といえるものもありますし、単なる思い込みと呼べるものまでさまざま。ただ行き過ぎたバッシングにより、本当に支援を必要とする人が手をあげることをためらう事態は避けたいものです。