皮膚科と美容皮膚科の違いは?
皮膚の疾患や傷を治療したいと思ったとき、皮膚科と美容皮膚科のどちらを受診すればいいか気になるという患者さんは多いのではないでしょうか。
皮膚科と美容皮膚科の違いとは何か、なぜ皮膚を専門とする診療科が2つに分かれているのか、あまりよく知られていないというのが現状です。
今回は、皮膚科と美容皮膚科の違いについてお話しします。これら2つの診療科はどうやって使い分けるとよいのか、また治療法や治療費には違いがあるのかといった内容をご説明しますので、ぜひご参考になさってください。
皮膚科と美容皮膚科、どうやって使い分ける?
皮膚科と美容皮膚科を比べたときの最も大きな違いは、治療の目的・ゴールがどこにあるかという点にあると考えられます。
皮膚科では、皮膚疾患や傷の治癒を治療の目的としていますが、一方で美容皮膚科では、主に肌をより美しくすることを目的とした治療を行っています(美容皮膚科で皮膚疾患の治療を行うケースもあります)。
たとえば、ニキビ治療を例にとってみましょう。ニキビは医学的には「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」と呼ばれる慢性的な炎症疾患の病態の1つで、皮膚科で保険診療を受けることができます。しかし、ニキビ自体が完全に治癒し、ニキビ痕のみにお悩みの場合には、保険診療だけで治療することは難しいことが多いです。
美容皮膚科ですと、美しい肌を目指す治療を行っているので、ニキビ痕の肌のデコボコなどを滑らかに整えていくような施術を受けることになるでしょう。
皮膚科と美容皮膚科の違いを理解しやすい具体例として、次に診療内容の違いを見てみます。
<皮膚科の診療内容>
●アトピー性皮膚炎
●尋常性ざ瘡(ニキビ)
●帯状疱疹(たいじょうほうしん)
●小児アトピー
●じんましん
●いぼ
●かぶれ
●水虫
●魚の目、巻き爪
●ヘルペス
●やけど、しもやけ
●虫刺され など
<美容皮膚科の診療内容>
●しみ、そばかす、肝斑(かんぱん)
●しわ、ほうれい線
●ニキビ、ニキビ痕
●色素沈着
●毛穴の黒ずみ、開き
●妊娠線
●小顔、ダイエット など
皮膚科か美容皮膚科かによって治療法や費用は変わる?
皮膚科と美容皮膚科は、治療に保険が適用されるか、適用されないかという点も異なります。保険適用内で行われる治療には種類に限りがありますが、自費診療ではさらに選択肢が広がります。
<治療法の違い>
皮膚科での治療は基本的に保険適用です。主に塗り薬や飲み薬の処方が行われますが、保険適応のレーザー治療を用意している病院もあります。
たとえば、色素沈着の場合、皮膚科の保険適用内の治療ではメラニン色素の生成を抑える薬や、肌のターンオーバーを促進する薬、トラネキサム酸やL-システイン、ビタミン剤などを処方します。生まれつきのシミや病気・ケガによってできたシミについては保険が適用され、機器の種類は限られますがQスイッチアレキサンドライトレーザーなどのレーザー治療を受けられることもあります。
一方、美容皮膚科は基本的に自由診療です。上記のように生まれつきあるシミや病気・ケガによるシミ以外にも、紫外線が原因でできたシミなどの治療は自費診療で治療を受けることができますし、再発防止のため肌の状態をより良く美しくするための施術を受けることが可能です。治療のメニューには、フォトフェイシャル、ピコレーザー、Qスイッチルビーレーザー、レーザートーニング、イオン導入など様々な種類があります。ただし、こうした保険適用外の治療は、保険診療よりも高額になります。
<治療費の違い>
皮膚科の保険診療は、原則としてかかった医療費の3割が患者さまの負担分となります(義務教育就学前のお子さんは2割、70歳以上の被保険者は年齢と所得に応じて負担額が変わります)。
一方で、保険適用外の自費診療は、全額が患者さまの負担分です。また、病院やクリニックごとに自由に料金設定できるので、治療を希望する場合は各機関の価格を比較するとよいでしょう。
まとめ
皮膚科と美容皮膚科は治療の目的・ゴールが異なり、治療のアプローチや治療費にも違いがあることがわかります。また、最近は皮膚科と美容皮膚科の両方を併設している病院・クリニックも増えてきています。患者さんご自身がどのような治療の在り方を希望されているかに応じて、皮膚科・美容皮膚科の使い分けていただくことができると思います。
小西 真絢
巣鴨千石皮ふ科 院長
日本皮膚科学会認定専門医
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