2022年より、日本の成年年齢は18歳となりました。そのことから「お金」や「投資」についてのリテラシーも、高校生の段階で身につけておくことが大切です。ここでは、人生の早い段階でライフデザインを行う重要性について、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。
社会人デビューの前に学んでおきたい!…人生を充実させる「ライフデザイン」と「お金の使い方」の法則

将来のお金を稼ぐために、いまお金を支払うこと=「投資」

公認会計士のK先生は、将来のお金を稼ぐために、いまお金を支払うことが「投資」であり、いま学校の授業料を支払って勉強することも「投資」だと教えてくれました。今回は、人生を充実させるためのお金の使い方についての解説です。人生の目標を決めて(ライフデザイン)、必要なお金を計算(ライフプランニング)します。お金の面から、将来の生活をイメージしておきましょう。2回目の講義です。

 

家計について考えよう! 稼いだお金を上手に使うには?

K先生:今日は、家計について学習するよ。お金の勉強では、「お金を稼ぐこと」だけでなく、「お金を上手に使うこと」まで考える必要があるんだ。家族全員が幸せに暮らすために、稼いだお金をどのように使えばいいか考えてみよう。

 

高校生:私の家庭は、主に父親が働くことで家計が成り立っていると思います。

 

K先生:そうだね。どこの家庭でも、お金の出入り、つまり収入と支出を管理しなければいけない。これを家計管理というんだ。君たち高校生の場合はどう? 収入には、お小遣い、アルバイト代があるだろう。この収入のなかから、買い物をしたり、友だちと遊んだりしているはずだよね。

 

高校生:そうですね。

 

成人になってからの家計をイメージ

K先生:それでは、これから成人、そして社会人になって君たちが自立して生活するようになると、どのような家計になるか、イメージできるかな?

 

高校生:就職すると、親からお小遣いはもらえませんね。お金が足りるか心配です。

 

K先生:社会人になると、君たちの収入は、働いて稼ぐ給料やボーナスになるんだ。その一方で、支出は、食費、住居費、水道光熱費、通信費といった生活に必要なものや、洋服を買う、車の免許を取る、旅行に行くなど、自分の好きなことに使うこともあるだろう。これに加えて、将来に備えて貯蓄をおこなうことも必要となるんだ。

 

高校生:私、お給料を全部使い切ってしまいそうです…。

 

会社の給料/控除/手取りの関係について

K先生:では、ここで君たちに問題です。将来、会社に就職したときをイメージしてみようか。会社からお給料が毎月20万円だといわれたとしよう。君たちは、毎月いくらお金を使えるだろう。どう思うかな?

 

高校生:自分で働いて20万円稼いだのであれば、全部使っちゃってもいいのではないですか?

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

K先生:いや、ダメだよ。給料から、税金や社会保険料が差し引かれるので、手元に来るのは20万円よりも少なくなるからなんだ。ここに給与明細のサンプルがあるので見てみよう。基本給、時間外手当、通勤手当といった支給額の以外に、所得税や健康保険などの控除額があるよね。控除とは、差し引くという意味だ。

 

高校生:たくさん控除されて減らされますね!

 

K先生:ここで気をつけたいのが、手取り収入の把握なんだ。手取り収入というのは、手元に残るお金のことだよ。

 

K先生:この例だと、支給額の21万8,000円から、税金と社会保険料を差し引いて、手取り収入は17万5,000円となっている。ここから支出や貯蓄を考えることが必要なんだ。家計管理の基本は、収入から支出を差し引いた収支を黒字にすること。そして、その黒字分を貯蓄に回すことなんだよ。

 

高校生:家計をしっかり管理して、お金を使い切らないように注意しなければいけませんね。

 

ライフデザインは家計管理よりも重要!

K先生:そうだね。ただし、家計管理よりも重要なことが一つあるんだ。それは、人生のゴールを決めること。

 

高校生:えっ、人生のゴールですか!? 私、芸能界に入りたいんですけど…。夢ではなくて、現実のゴールにできますか?

 

K先生:そのゴールをこれからしっかりと考えていこう。自分が将来どんな夢に向かって、どんな生活を送りたいか、自分の生き方を考えること、これを「ライフデザイン」というんだ。

 

高校生:自分の生き方なんて、まだ考えたことなかったです…。

 

K先生:早い時期にライフデザインを描いて、その夢や目標に向かって努力を始めることで、それらの実現可能性を高めることができるんだ。ただし、それにはお金が必要。ライフデザインの実現のために、どのようにお金を準備すればいいのか、考えないといけないよ。

 

★教育が投資ってどういうこと?高校生から知っておきたい投資の知識はこちらをチェック

【家庭科/資産形成】資産形成の基本は教育への投資【第1話】

 

ライフデザインに沿ったお金の計算方法とは?

高校生:具体的にどうやってお金を計算すればいいのでしょうか?

 

K先生:毎月の家計管理と同様に、一生涯の収入と支出のイメージをつかむことだね。人生全体を通して、収入と支出のバランスを取ることが大事だ。ここで、人生の収支計画を時系列で描くことを「ライフプランニング」というんだよ。

 

高校生:「ライフプランニング」ですか…。なんだか難しそうですね。

 

K先生:どんな仕事をしたいか、独身か結婚するか、子どもはどうするか、どこに住むか、何歳まで働くか…など、君たちが思い描く将来はさまざまだろうね。そこでいちばん重要なのが「働く」ということなんだ。私たち人間は、働くことで夢や目標を実現することができる。働く時間は、人生の時間の大きな割合を占めるものだから、どのように働くかで、人生の充実感は大きく左右されることになる。それに、生きていくにはお金が必要だから、働くことで生活費を稼ぐことになるよね。

 

高校生:私もしっかり勉強して、たくさん稼げるようになりたいです!

 

★高校生から知っておきたいライフプランニングと家計管理はこちらをチェック

【家庭科/資産形成】ライフプランニングと家計管理【第2話】

 

【収入】将来の働き方の種類とそれぞれの違い

K先生:では、働き方について考えてみようか。君たちは、どのような職業や働き方を希望しているのかな? 職業や働き方は、多種多様だけれども、大きく分類すると、雇用される働き方と、それ以外の働き方に分けられるんだ。雇用される働き方の典型例は「会社員」だね。会社員には、直接雇われている正社員や人材派遣会社から派遣される派遣社員がある。そして、正社員と比べて労働時間が短いアルバイトやフリーターなどの働き方もある。

 

高校生:いろいろありますね!

 

K先生:それ以外にもあるよ。自営業者の親から家業を継ぐケース、自分で会社を立ち上げて起業するというケース、フリーランスとして自由に働くケースがあるね。どのような働き方を選択するかは、その人の考え方や状況次第だけれども、働き方によって収入が大きく異なってくるんだ。

 

高校生:私はフリーランスがいいですね。お金よりも仕事の楽しさを大切にしたいですから。

 

K先生:正社員の場合、年齢が上がるにつれて収入が高くなるけれど、正社員以外の場合は、年齢が上がっても収入は平均300万円くらいで変わらないんだ。労働時間や福利厚生社会保険制度なども働き方によって違いがあるから、そうした違いがあることを知った上で、自分がどのように働くか選ぶことが重要だね。

 

高校生:えーっ、芸能界で働くのは厳しそうですね…。

 

【支出】教育/住宅/老後の資金を押さえる!

K先生:それでは、一生涯の支出について考えよう。人生の大きな支出には何があるだろう?

 

高校生:結婚や出産、住宅の購入費用ですね!

 

K先生:そうだね、それ以外にも子どもの教育、親の介護、自分の老後資金には大きな支出が伴うね。大きな病気やケガをすると医療費がかかることもあるね。このうち、教育と住宅と老後のお金を、「人生の三大費用」と呼び、最も大きな支出となるんだ。

 

高校生:人生の三大費用ですか!

 

K先生:教育には800万円から2,000万円、住宅には3,000万円から4,000万円、老後には、90歳まで生きるとして8,000万円から1億円が必要になると考えておいたほうがいい。

 

高校生:老後1億円ですか!? そんなお金、準備できないですよ…。

 

K先生:大丈夫! 日本では公的年金が手厚いから、そのうち6,000万円から9,000万円は年金として国から支給されるよ。

 

高校生:そう何ですか、助かりますね! 老後も安心ですね。

 

K先生:重要なのは、三大費用をどうやって貯めるかなんだよ。会社員の一生涯の収支を考えてみると、自分で稼ぐ収入は、賃金や退職金、自分が貯めて増やした資産になるんだ。その一方で支出は、生活、教育、住宅、老後費用、そして借金の利子があるんだ。毎月の家計管理も必要だけど、人生全体のライフプランニングを考えて、上手にお金を貯めることが重要になるんだよ。

 

高校生:お金って、重要ですね!

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

 

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