日本の長引く低金利と海外の金利上昇を背景に「外貨建て保険」の販売が急増しています。なかでも「米ドル建て終身保険」への加入を検討する人は多いそうです。本記事では「米ドル建て終身保険」含め、外貨建て保険に加入する際に注意すべきデメリットをサンモールFP事務所代表の辰田光司氏が解説します。
いま「米ドル建て終身保険」が人気だが…加入時に注意すべきデメリット【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「外貨建て保険」の主なデメリット

「外貨建て保険」のデメリットとして為替リスクをあげましたが、ほかにも以下のようなデメリットがあります。

 

【「外貨建て保険」の主なデメリット】

1.為替リスクがある

2.保険料の支払い、受取時に為替手数料がかかる

3.契約・解約時などで、さまざまな手数料がかかる

4.仕組みが複雑で、わかりづらい

 

項目2ですが、「外貨建て保険」の場合には、保険会社は外貨で運用をしますので、外貨または円貨に両替をする際に為替手数料が発生します。たとえば、 為替相場が1ドル=150円、為替手数料が片道0.5円の場合、手数料は以下のようになります。これは円建ての保険にはありませんので、注意が必要です。

 

・保険料払込時 1ドル当たり150円+0.5円=150.5円を払い込む

・保険金支払時 1ドル当たり150円-0.5円=149.5円を受け取る

 

また、項目3ですが、一般的な保険商品では、申込時には「契約初期費用」、契約期間中は「契約維持管理費用」など、さまざまな手数料が発生します。また、契約期間を定めている保険商品の場合、中途解約をすると解約控除(解約金)が発生するものもあります。これは、外貨建て保険でも同様です。特に解約をする際は、金利の動向によって想定以上の解約控除が発生する可能性がありますので注意しましょう。

 

なお冒頭で、「米ドルで運用する外貨建て保険は、多くの商品の積立利率が年3%を超えている」と書きましたが、積立利率は、(支払った保険料から経費などを差し引いた)積立金に対して適用される利率です。「実質的な利回り」は積立利率より低くなるのが一般的ですので、契約前に確認しておきましょう。

 

最後に項目4ですが、これはいままでの説明でも感じ取れたのではないかと思います。契約をする前には十分に説明を聞いて、内容を理解することが大切です。

 

このような「デメリット」が正しくお客様に伝わらなかった結果として、銀行等の販売代理店窓口で発生した「外貨建て保険」に関する苦情相談件数は、2019年度に2,822件に達しました(出所:一般社団法人生命保険協会「生命保険各社の苦情受付情報・保険金等お支払情報について」)。その後、販売側のさまざまな取組みなどもあって事態も改善されつつあり、2021年度は1,375件まで減少しましたが(出所:同上)、加入に当たり「注意すべき保険」であることは変わりありません。よくわからないときはすぐに応じず、中立的な(保険を販売していない)ファイナンシャルプランナー(FP)にご相談することをおすすめします。