50代で終身保険を見直すべきか?
50代会社員の男性のお客様から"保険の見直し"のご相談をお受けしました。お客様は定期保険特約付き終身保険に加入しています。
「保険会社から、『間もなく特約の更新時期です。更新後は、保険料が大幅に上がります。お子様はお2人とも高校生でしたね。教育費もかかりますし、死亡保障をより充実させたほうがよいと思います。』と説明されました。『この機会に、万一の保障も充実した保険に見直されたらいかがでしょう?』と勧められています。見直すべきしょうか?」とのことでした。
取り扱う相談数も多い保険の見直しに関するご相談。今回のご相談者の場合、このタイミングで保険の見直しはすべきなのでしょうか? ご説明します。
加入してから数年がたった生命保険
生命保険に加入して数年が経つと、保険会社から「現在の保険を見直して、保障を充実させませんか?」と勧められることがあります。一般に生命保険は、長期にわたり(場合によっては一生)続く契約です。また人生においては、就職、結婚、お子様の誕生や独立、マイホームの購入、転職や退職など、様々な節目があり、必要な保障の内容が変化します。このため、加入時には最適だったはずの保障内容が過大または過小となったり、不要になったりします。仕事や子育てなど日々の生活も忙しいかと思いますが、上述した節目では、「保障の見直し」をするようにしましょう。
しかし「保障の見直し」にはいくつか方法があり、それぞれ「長所」や「注意点」があります。
現在の保障「終身保険400万円+定期保険1,600万円」を見直すと…
先のご相談者のケースのように「保障の見直し」をする方法を、「転換」といいます。「転換」とは、現在契約している保険(保険Aとします)で貯めてきたお金(積立配当金等)を利用して、同じ保険会社の新しい保険(保険Bとします)に加入する仕組みをいいます。よく「車の下取り」にたとえられます。
一般的には、保険Aに加入したときよりも年齢が上がっていますので、保険Bの保障内容が保険Aと同様である場合、保険Aよりも保険料は高くなります。しかし「転換」の場合は、保険Aの積立配当金等を保険Bの保険料の一部にあてますので、保険Bにゼロから加入するよりも保険料負担が軽減されます。しかし、この「転換」には注意点があります。
【「転換」の主な注意点】
1.保険料は転換するときの年齢や保険料率で計算されます。
2.同じ保険会社でなければ利用できません。また、転換を取り扱わない保険会社があるなど、会社により取扱基準が異なります。
3.告知または診査が必要です。
先のご相談者は、約25年前に現在の保険に加入していました。そして、加入時の予定利率(保険会社が契約者から受け取った保険料を運用する際に約束する利率)は3%でした。現在は超低金利が続いておりますので、予定利率も史上最低水準になっており、0%に近くなっています(保険会社や保険の種類によって異なります)。
注意点1のとおり、「転換」をすると、そのときの予定利率が適用されることになります。すなわち、0%に近い予定利率になるということです。これは多くの場合、契約者にとって「損な契約」になってしまいます。
また、「転換」を勧められたときは、転換前と転換後で保障内容や積立部分がどのように変わるのかを、しっかりチェックしましょう。
先のご相談のケースでは、
・現在の保障 … 終身保険400万円+定期保険1,600万円(合計2,000万円)
・提案された保障 … 終身保険100万円+定期保険2,400万円(合計2,500万円)
確かにトータルの保障額は2,000万円から2,500万円に増えていますので、保障は充実したといえるかもしれません。しかし、貯蓄性のある「終身保険」の額が400万円から100万円に減っています。定期保険が満期を迎えたあとの死亡保障額が減り、解約返戻金の額も減ってしまいます。
もちろん、これらのことを理解し、納得をしたうえで契約をするのであればよいと思いますが、保険会社に勧められるまま契約をしてしまう例も見受けられます。
保険会社が「転換」を勧める場合には、新旧契約の内容比較などを、書面を用いて説明することが義務付けられています。わからない点は説明を求めて、内容を確認するようにしましょう。
ただし、転換をすること自体が悪いわけではありません。メリットもあります。
【「転換」の主なメリット】
1.契約後一定期間は、新規で加入するより安い保険料で加入できる
2.複数の契約をまとめながら、最新の保険に見直すことができる
3.「特別配当金」(長期継続した生命保険が対象)を受け取る権利が継承される
ご自身が希望する保障内容に変えることができて、予定利率も下がらないのでしたら、転換をしたほうがよい場合もあります。予定利率は、保険会社のコールセンターに電話すれば教えてもらえますので、わからない場合は確認しましょう。