全業界水準を大きく下回る、タクシードライバーの給与
業界的に若返りが課題であるものの、それが進まない理由のひとつが、タクシードライバーの低賃金。前出の厚労省の調査によると、タクシードライバーの年収は280万5,100円。平均的な賞与(割合)を手にしていることを前提にすると、月収は19.3万円で手取りにすると15万円程度になります。
コロナ禍で大きな打撃を受けた業界なので、コロナ禍前、2019年の給与もみていくと、タクシードライバーの平均年収は360万3,800円。月々の手取りは20万円程度になる計算です。一方、全職種の平均年収は2019年で560万9,700円。月収は38万円、手取りにすると29万円ほどです。もともと手取りで月10万円ほどの格差があり、コロナ不況により、その差はさらに広がりました。給与面だけみれば、特に若年層には敬遠されてしまう水準です。
さらにイメージされるのが、過酷な労働環境。売上目標を達するまで乗車する、深夜勤務も当たり前……そんな労働環境がかつては当たり前でした。しかし昨今は業界全体でも改善の方向に進み、厚生労働大臣、国土交通大臣告示により、拘束時間の限度や休日労働の回数は決められています。
たとえば日勤勤務の場合、拘束時間は1日13時間以内、1ヵ月299時間以内、最大拘束時間は16時間以内。休日出勤も1ヵ月における総拘束時間の範囲内で2週に1回と決められています。2021年の平均労働時間は月176時間。これは全産業男性労働者の平均181時間を下回っています。いまや「タクシードライバーはツラい」というのは過去の話になりつつあります。
またタクシー業界にはインバウンド需要復活のほか、高齢化によりケア輸送の増加が見込まれるなど、明るいニュースが。高齢ドライバーの免許返納の流れもありますし、高齢化社会のなかでは一層の需要拡大が見込まれ、私たちの生活にはなくてはならないインフラになる可能性を秘めています。
確かにコロナ禍で「これでは生きていけない……」というほど苦境に立たされたタクシードライバーですが未来は明るく、人気職種になる可能性を秘めています。