年間10万人が退職…親の介護、終わりと共に訪れる最悪の事態
親が認知症になった場合、治療や介護など、多くの費用がかかってきます。それは長期に及び、大きな負担となるでしょう。その費用は親自身の年金や貯蓄などで対応するケースが多いですが、賄いきれず、介護者となる子が負担することも珍しくありません。
また認知症の親の介護のため、子が仕事を辞めなければいけないことも。総務省『就業構造基本調査』によると、介護・看護により離職した人は、年間10万人前後。7割が女性で、残りが男性です。
親の認知症問題が顕在化する50代、その前半のサラリーマンであれば、給与は平均月45.4万円、手取りにすると33万円ほど。推定年収は692万円で、会社員人生でピークに達します(厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』より)。一方で50代は老後を見据えて貯蓄を本格化させるタイミング。ここでどれほど資産を拡大させられるかによって、老後の安心は確約されるといっていいでしょう。
そんなときに、親の認知症が悪化し退職せざるを得なくなったら、子の老後は一気に不安なものに。認知症の介護年数は平均で6〜7年といわれています(公益社団法人認知症の人と家族の会の調査による)が、平均よりも長くなることも当然、考えられます。そうなると親の介護を終えてから仕切り直しというのはほぼ不可能です。
22歳から50歳まで平均的な年収を得たのち、認知症の親の介護で退職となったサラリーマンの場合、65歳からもらえる年金は、月々13万円程度。65歳以上の男性がもらえる年金額は17万円ですから、平均値を大きく下回ることになります。さらに老後を見据えての貯蓄も進められなかったとなると、その生活はかなり厳しいものになることは確実。親の介護の先に待っているのが、そんな苦しい生活だとすると浮かばれないでしょう。
このような認知症介護による負の連鎖は、今後、ますます増えていくと予測されます。認知症患者本人だけでなく、世代を超えた経済的なサポートも考えていかなければならないでしょう。