子どもの教育費に、住宅ローンに……現役世代の人たちを悩ませる、お金の問題。引退するころには不安もなくなるかといえば、そうではなく、反対に心配は大きくなるばかり。自由を満喫してきた単身者であれば、老後不安は大きなものになるでしょう。さらに頼りの年金も期待できない、低年金者であれば、その不安は計り知れません。みていきましょう。
年金月10万円…元会社員・低年金の単身高齢者、要介護の絶体絶命に「もう、生きていけない」 (※写真はイメージです/PIXTA)

元会社員でも4人に1人が年金月10万円以下…老人ホームなんか、考えられない

老後になってもなお付きまとう、お金の心配。元会社員が手にする年金は、平均月14万6,145円。男性65歳以上に限ると、17万0,391円です(厚生労働省『令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』)。おひとり様高齢者の生活、これで足りるか足りないかは、ライフスタイルによりますし、貯蓄額によっても変わって来るので、一概にいうことはできません。

 

ただ元会社員で年金を手にしている人の3%弱は「月5万円以下」、23%強は「10万円以下」。おひとり様高齢者の4人に1人は、低年金といえる状況です。

 

また生活費の足りない分は貯蓄から取り崩していくのが老後の基本パターン。年齢を重ねるごとに資産が減っていくわけですから、どんなに貯蓄があろうと不安になるのは仕方がないことでしょう。

 

さらに加齢とともに増えていくのが介護の問題。要介護認定者は80代前半で26.4%、85歳以上で59.8%。長生きすればするほど、介護状態になるのは避けられません。自宅で暮らすのも難しくなってきたら、老人ホームへの入居が視野に入ってきます。そこで気になるのが費用感。終身利用する権利を取得する目的に対して払う「一時入居金」はゼロ円~、高級施設だと億超えというところも珍しくありません。また月額費用は「家賃」「管理費」「食費」などが含まれ、10万~30万円程度。こちらもピンキリですが、費用に含まれていないものもプラスしていくと、月20万円ぐらいの費用は考えておくべきとされています。

 

そうなると、年金月10万円未満の低年金のおひとり様は、どうすることもできません。十分な介護も受けられず、「もう生きていけない」と最悪の結果を待つしかない……と、そこまで日本は残酷ではなく、低所得の高齢者を救う制度があります。

 

低年金で老人ホームに入れない場合、利用を検討したいのが、介護保険施設を利用する場合にかかる居住費や食費の支払いの負担を軽減する制度「介護保険負担限度額認定制度」。申請のうえ、条件を満たしていれば、「介護保険負担限度額認定証」が発行。施設サービスを受ける際にかかる費用負担が軽減されます。

 

利用条件は世帯全員が市町村民税非課税であることなど、以下の【図表】のとおり。入居する施設や部屋のタイプなどにより、負担額は変わりますが、たとえば、特別養護老人ホーム(短期入所生活介護の場合)・多床室の利用の場合、第1段階は食費は日額300円、多床室なら0円。30日で9,000円ですから、低年金でも安心でしょう。

 

【図表】介護保険負担限度額認定制度 補足給付の支給対象

 

ただし、この制度は申請しないと利用できないもの。困っているからといって手を差し伸べてくれるものではありません。年金含めて、老後生活に関わるあらゆる制度は自ら動いたり、声をあげたりしないと利用できないことを知っておくといいでしょう。