70歳で認知症が悪化…82歳女性が「家族も納得の最期」を迎えるまで
高齢化の加速、それに伴い、認知症患者の増加。そこで発生するのは、行方不明者の増加です。警視庁『令和3年における行方不明者の状況』によると、認知症による徘徊のすえ、行方不明になってしまった人が、2021年の1年で1万7,636人。5年で10%強、増えています。行方不明の届け出後に見つかるケースもありますが、最悪の事態に至ることも珍しくありません。
このように本人だけでなく、その家族にも負担を与えることになる認知症。発症してからでは遅いので、万が一のとき、どのようにすべきか、家族ともよく話し合っておくことが重要です。そして、話し合っておきたいことのひとつが、人生の幕引きについて。厚生労働省『人生の最終段階における意思決定支援事例集』より、認知症患者の最期について、その一例をみていきましょう。
●本人:北陸地方、82歳、女性
●居住形態と家族構成:認知症グループホーム(GH)に入居。家族は長男とその妻
おでん屋を営んでいた女性。やりたいことをやりたい反面、したくないことはしたくない性分。70歳を目前に認知症が悪化し、GH入所。当初、家族は仕事が多忙でほとんど来所がない状態でしたが、病状が悪化し終末期に近づくにつれ、長男の訪問は増えていきました。
本人としては病院を嫌い、環境変化は苦手。永らくGHで暮らし、特に苦痛にしていることはないといいます。また長男は、生まれ育った町で最期まで過ごせると良い、本人の性格から家族としても胃ろう等の無理な延命処置はやめてほしいと考えていました。
その後、食事量とADLの低下を契機に、施設ケアマネージャーや介護職人等と話し合うことを開始。本人の意思を推定しながら「医療やケアの内容」「最期の場」について繰り返し話し合っていったといいます。そして急激な状態悪化で、ほぼ食事がとれなくなると、延命処置はせず、 GHでの看取りを決断。最終的に82歳、老衰での大往生となり、家族も納得する最期に。
出所:厚生労働省『人生の最終段階における意思決定支援事例集』より一部抜粋、編集
家族でさえ、また家族だから、なかなか話しづらい人生の最期。認知症になれば、その意思を伝えることは難しくなります。それにより、残された家族は大きな後悔を背負うことも。大切な家族のためにも、普段から万が一のことを伝えておくことが大切です。