労働環境が改善され、長時間労働など昔話のように語られるようになりましたが、一方で「残業時間は減っていない」という実態があります。それは、民間企業だけでなく公務員の世界でも同じこと。みていきましょう。
平均手取り32万円だが…「精神的にツラいです」疲れ切った「国家公務員」の悲痛 (※写真はイメージです/PIXTA)

一部に大きな負荷がかかる「国家公務員」の実態

所定内労働時間の減少により、日本人の働く時間は減少傾向にあるものの、一部に大きな負荷がかかっているだろう実態がみえてきました。それは民間企業だけでなく、公務員も同じよう。

 

同白書によると、国家公務員(一般職)の2019年、超過勤務の年間総時間数は、全府省平均で219時間、本府省で348時間、本府省以外で190時間となっています。これは2020年1月15日時点で国家公務員在職者のうち、2019年度中に超過勤務手当の対象となった人の1人当たりの同年1年間の超過勤務時間数です。

 

また国家公務員の公務災害の補償状況の推移をみていくと、「脳・心臓疾患」の協議件数は2019年は11件と、前年4件から大きく増えたものの、2006年の41件をピークに減少傾向。ちなみに2020年は1件でした。また「精神疾患等」の協議件数も、2019年は33件と2018年15件から大きく増えたものの、2006年56件と比較すると、減少しているといえます。ただし「脳・心臓疾患」ほど顕著な傾向はみられず、労働環境の改善により、体力的にはラクになった人は増えたものの、精神的に苦しい思いをしている人はまだまだ顕在であることがわかります(図表1、図表2)

 

出所:厚生労働省『令和3年版過労死等防止対策白書』
【図表1】一般職の国家公務員に係る脳・心臓疾患の協議件数の推移 出所:厚生労働省『令和3年版過労死等防止対策白書』
【図表2】一般職の国家公務員に係る精神疾患等の協議件数の推移

 

人事院『令和3年人事院勧告』によると、自ら決定することが困難な業務の割合が多い部署の職員の8.7%は、上限を超えて超過勤務を命じられ、本府省の他律部署に限ると15.7%にも上ります。また超過時間をみてみると、1ヵ月に100時間未満の上限を超えた職員が7.8%、2~6ヵ月平均で80時間以下の上限を超えた職員が10.4%もいました。

 

国家公務員(25万3,000、平均年齢42.7歳、平均経験年数20.9年)の給与は基本給33万6,333円、諸手当を入れて41万4,729円。手取りにすると30万~32万円ほど。今年度の国家公務員の給与について、人事院の勧告通り、3年ぶりに月給・ボーナスともに引き上げることを決定しました。

 

公務員の給与は民間準拠という前提があるので、大きく増えることはないものの、やはり安定性は魅力。しかし、一部に大きな負荷がかかり、「精神的にツラい」という声はSNSなどでも拡散。「公務員離れ」を加速させています。国家公務員はまさに国を運営するのに不可欠な存在。精神的にも健康で働くことのできる環境が求められています。