2―2020年の日本は40歳代以上が6割
2020年における人口構造が50年前の1970年と比べてどれくらい変化したかをグラフで可視化してみたい(図表2)。
半世紀前の最多世代人口は20歳代であったが、2020年には40歳代人口が最多世代となっている。40歳代人口は1794万人に達し、総人口の15%、およそ6人に1人は40歳代という状況となった。
戦後最多出生の団塊世代の人口は、すでに2020年において70歳代前半に達しており、主に男性人口を中心に死亡による人口減が発生していることから、団塊世代=最多世代人口ではなくなっていることに注目したい。団塊世代の代わりに、彼らの子供世代となる団塊ジュニア世代(1971年から1974年生まれ。年間200万人超出生)が2020年における40歳代後半人口となっていることから、このような人口構造となっている。
冒頭に紹介した「自分たちは親世代である団塊の世代の考え方を押し付けられた被害者だと思っていたけれど、そんな自分たちも同じことを若者たちに繰り返しているのではないか、と恐ろしくなりました。」という読者の声からもわかるように、いまだに団塊世代を中心とした高齢者が最も人口が多いという感覚をもっている人も見受けられるが、実は令和時代に入った日本で最も世代人口が多いのは40歳代を中心とした中高年世代なのである。
半世紀前の1970年において、30歳代以下の若年人口と40歳代以上の中高年人口は約7:3の割合であることを1章で解説した。しかし、2020年になるとその比は、37%と63%と全く逆転し、中高年世代以上が世代においてマジョリティ化しているのである。最多世代人口である40歳代を100%とすると、もはや20歳代人口は66%しかおらず、10歳代人口は61%、10歳未満人口は53%と、40歳代人口の半分にまで減少している。
このように半世紀を経て40歳代を最多世代とする「中高年化」した社会では、過去の価値観を引きずったまま行動することによる社会での弊害が随所で発生しているように思われる。特に人口統計的に少子化社会を生み出す最大要因にもなっている未婚化問題について、「中高年化社会」がもたらす弊害は非常に大きいと感じている。
国立社会保障・人口問題研究所が公表した第16回出生動向基本調査(2021年実施)の結果を見ると、18歳から34歳までの未婚男女の約8割が結婚を希望しており、従来と変わらずパートナーを求める人は依然として多い。しかし、人口構造の変化を理解しないまま、過去の価値観に基づくアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を持って実状にそぐわない、結果的に相手にハラスメントとなるような結婚に関する発言をする人が少なくない、という問題が生じている。
国税庁が発表する「民間給与実態調査」(令和2年版)によれば、「平均給与」は男性 532 万円、女性 293 万円である。上述の通り、半世紀前であれば、20歳代が最多世代人口であり、30歳代までの人口が約7割であったことから、この平均給与をベンチマークに「平均給与あたりの相手と結婚したいです」と適齢期にある20歳代男女がリクエストしたとしても、実態からの大きな乖離はなかったと考えられる。
しかし令和2年(2020年)の同調査における平均所得の計算対象となった者の平均年齢は、なんと男性46.8歳、女性46.7歳にまで上昇している(ちなみに国税庁のホームページで公開されている最も古い同調査は1997年調査結果だが、そこに掲載されている平均年齢推移データをみると1982年の結果が最古データであり、男女計で平均年齢40.1歳となっている)。
つまり、平均水準の給与の相手との結婚を希望するのであれば、統計上の実現可能性から考えると、男女ともに40歳代半ばの相手から探しましょう、という話に他ならない。
しかし、実際の結婚支援の現場で活動する人々から伺うところでは、人口動態の変化と統計に関するデータへの無理解から、いまだに「平均年収にも届かない相手は大丈夫か」といった半世紀前の価値観に基づくハラスメント発言が婚活者の親世代や中高年の婚活者などからよく聞かれる、というのが現状である。