本記事では、ニッセイ基礎研究所の天野 馨南子氏が、過去の人口構造イメージを引きずったままの「中高年化社会」が持つアンコンシャスバイアスが、少子化問題に大きな影を落としかねない点を解説。さらに9月に公表された「第16回出生動向基本調査」の独身者調査の分析結果をもとに、人口マイノリティである若い世代の理想の結婚像が、人口マジョリティである中高年世代が描く理想の結婚像とあまりにも大きく乖離している姿を明示していく。
激変した「ニッポンの理想の家族」…第16回出生動向基本調査「独身者調査」分析/ニッポンの世代間格差を正確に知る (写真はイメージです/PIXTA)

3―半世紀で激変した「理想の結婚生活」

3-1.見て育った親の姿の変化とともに

9月に発表した「若年層へのハラスメント社会の危機-人口動態が示すアンコンシャス・バイアスの影-」でも解説したが、人口構造が変化しても各世代の価値観に変化がないのであれば、世代観ギャップによるアンコンシャス・バイアスに基づくハラスメント問題は発生しないだろう。しかし、半世紀の年月を経て、男女の価値観は大きく変容している。中でも目に見えて大きな変化がみられるのが「理想の結婚」のカタチである。

 

一体、どれくらいの価値観変容があるのだろうか。

 

国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査(2021年)」から、日本の未婚男女の家族形成にかかわる意識調査結果のオープンデータを筆者が再分析した結果を紹介したい。

 

まず、理想のライフコースを尋ねた質問の回答者(回答時に18歳から34歳の未婚男女)が、2022年現在何歳なのか(回答者の世代の確認)、また彼らが生まれた時点での夫婦の労働環境に強く影響していたと考えられる法律の施行状況を整理した(図表3)

 

【図表3】出生動向基本調査第9回(1987)から第16回(2020)までの理想のライフコース質問・回答男女の年齢、世代、出生時の法施行状況表

 

回答者の年齢ゾーンによって、その背中を見て育った親世代の労働環境が異なるため、成育環境において培われた就業に対する価値観も異なってくるからである。調査回ごとの回答者の現在年齢と出生時の女性の就労に関する法律の整備状況を整理することにより、世代による就業価値観を推量することができる。

 

図表からは2022年現在も、男女雇用機会均等法・育休法・女性活躍推進法という女性が働く環境を整備した法律が各世代の価値観にしっかり影響するには未だ日が浅いと感じる。

 

この根付くにはまだ時間がかかるだろうという感覚について、印象的な思い出がある。筆者が4年前に講演会で出会ったある女子大学生が「今まで結婚願望はなかったが、夫婦とも正社員共働きで子どももいる家庭を訪問して考え方が変わった。今は結婚したいと思っている」と私に話してくれた。彼女にとって、それまでは「バリバリ働くこと」と「結婚すること」が二者択一のものであり、そのことに何の疑いも持っていなかったという。筆者が「もしかしてあなたのお母さんは専業主婦ですか」と聞くと、「その通りです。彼女みたいな人生は、私には無理だと思いました。だから自分には結婚という選択肢はないと思い込んでいたのです」という回答が返ってきた。

 

この出来事はわずか4年前だったこともあり、いまだにこんな思い込みがあるのか、と驚く一方で、彼女の気持ちがわかる、そうだろうなと納得するところもあった。筆者は団塊ジュニアであるものの、同世代では、というよりも、日本においては未だに少数派の「正社員で定年まで働き続ける共働き夫婦の妻で、子どももいる女性」である。筆者の両親が共働きで、多子世帯だったことから、筆者自身はこの女子大学生のように仕事と結婚の二者択一のような意識もなく、何のためらいもなく、両親と同じ共働きライフコースを選択したからである。