コロナ禍でリモートワークが広がるなか、十分にスペースを確保できる戸建て住宅の人気が高まっています。なかには高い競争率で「早く決めないと、ほかの人が決めちゃいますよ」と急かされる場合も。そんななか「全額ローン」で即決し、マイホーム購入に至るケースも珍しくないとか。ただ安易に全額ローンを利用すると……みていきましょう。
全額ローンで家を買ったが…30代会社員が破産を覚悟した「毎月の返済額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

平均的なマネープランで戸建て購入と、全額ローンで戸建て購入…返済額の違いは?

戸建て住宅購入者の平均像を国土交通省『令和3年度住宅市場動向調査』で確認していきましょう。戸建て分譲住宅を購入した人(世帯主)の平均像は以下の通り。4,000万円程度の住宅に対し、1,000万円弱の頭金を用意し、3,000万円を超えるローンを活用して購入に至っています。

 

【戸建て分譲住宅購入者の平均像】

世帯主平均年齢:37.2歳

購入資金:4,250万3,200円(頭金:886万円、借入:3,363万9,400円)

自己資本比率:19.0%

平均返済期間:34.1年

 

出所:国土交通省『令和3年度住宅市場動向調査』より

※戸建て分譲一次取得者、数値はすべてそれぞれの平均値

 

そんな平均に対し、全額ローンだった場合、どのような返済プランとなるのでしょうか。返済方式は元利均等、金利は当初5年は0.5%、以降は1%と仮定します。その場合、利息分は5,22万4,949円。月々の返済は5年目までは8万9,447円、5年目以降は9万5,955円です。同条件で全額ローンだとすると、利息分は660万3,137円と140万円弱の差。月々の返済は5年目までは11万3,039円、5年目以降は12万1,263円と、月々2万5,000円ほど、負担は大きくなります。

 

単月では数万円の違いですから、「それくらいの差なら全額ローンでも……」と考えがち。しかし、平均34年と、長期間に渡り数万円の負担がかかり続けることを忘れてはなりません。

 

また金利が同じと仮定して計算しましたが、全額ローンのデメリットとして、「金利が高くなる」というものがあります。フラット35(借入期間21年~35年)の場合、融資率が9割以下と9割超えで、0.2~0.3%の金利差が生じます。

 

これまた「わずかな金利差」と考えがちですが、仮に上記シミュレーションで金利が0.3%高くなると、月々の返済は5,000~6,000円ほど増えることになります。これが34年続くワケですから、ボディーブローのように家計を圧迫。無視することはできないでしょう。

 

同調査では「住宅ローンに負担感がある」としたのが6割強。多くが苦労しながら、夢のマイホームを維持しています。また戸建て分譲住宅の平均購入年齢が37.2歳ということは、これから子どもの教育費が増えていくタイミング。家族が増えるというケースもあり、家計負担はさらに重くなっていくでしょう。

 

そのような状態で、月々数千円、数万円の違いはかなりの大きさ。安易に全額ローンを利用してしまったばかりに、常に一歩間違えたら破産してしまう家計運営……そんな状態に陥るケースも珍しくないのです。

 

もちろん借入額の大きさに限らず、ローンを利用しているということは、誰しもリスクを背負っています。破産リスクは全額ローン利用者に限られたものではありません。ただどうしてもという事情がない限りは、最低でも1割を超える頭金を用意し、ローンを組んだほうが無難だといえます。