さらに今後に立ちはだかる大きな問題点
家計の問題点はこれだけではありません。建物には高額な維持費がかかります。Aさんの住宅には、太陽光発電システム、蓄電池、給湯器、エアコンなどの設備があり、これらを定期的に買い替えすることになります。また、屋根・外壁の塗り替えも10年ごとに必要です。その平均的な費用を見積もると、Aさんは唖然としました。
「設備はともかく屋根外壁のメンテナンスなんて本当に必要なのですか?」
とAさんが言います。しかしメンテナンスを怠ることで建物の寿命が短くなります。定年退職の頃に建物の解体を余儀なくされたら目も当てられません。
建物と設備のメンテナンス費用と同時に、お子様の大学資金を積み立てていく必要もあります。そう説明するとAさんは言います。
「ファイナンシャルプランナーは大きな支出があるときは生命保険の解約返戻金から借りる方法もあると言っていました」
それは生命保険の解約返戻金からお金を借りられる制度のことです。しかしAさんが加入している生命保険の仕組みでは、貸付の金利は保険の予定利率+1%となっています。Aさんの契約の場合、どうやら4%近い利率です。
「銀行のリフォームローンよりもはるかに高い金利でお金を借りるなどナンセンスです」
生命保険からお金を借りていたら、その利息で家計はもっと苦しむことになるでしょう。企業でたとえると、赤字では倒産せず資金繰りがショートして倒産するものです。これは家計も同じです。やりくりが破綻したときに自己破産に陥ってしまうのです。
世帯年収1,200万円をもってしても、家計の資金繰りを間違えればあっけなく破綻してしまいます。
FPが提案した家計再生案とは…
Aさんがまず取り組むべきことは、普通預金にキャッシュを残すことです。
設備の交換費用
大学進学費用
自動車の買い替え費用
これらは現金を貯めて対応するのが理想です。毎月とボーナス時に貯蓄用の銀行口座に寄せておく金額を決めました。
次に、外貨建て終身保険を解約することに。これだけで毎月10万円が浮きます。生命保険は掛け捨ての保険に見直し、2人で毎月16,000円の支払いまで減額しました。
キャッシュを残すためには節約も必要です。Aさんが所有するドイツ製高級車の維持費が高額であるため、中古車への買い替えを決断。買い替えた場合の維持費を正確に比較し、ハイブリッド車に乗り換えました。
一方でご夫婦の共通の楽しみである旅行は見直しをしいないことに。やめてもいいものと、やめられないものとの仕訳と優先順位付けを行ったことでAさんは安心したようです。
老後資金のための資産運用については、家計の資金繰りが安定し一定額のキャッシュが貯まってから再検討することにしました。退職金はそれぞれ1,500万円程度が期待できます。2人で3,000万円です。それ以外に退職時に現金で2,000万円貯められていれば、合計5,000万円。老後資金としては潤沢でしょう。ハイリスクな資産運用を考えなくても済むかもしれません。
住宅購入時に気をつけるべきこと
住宅を買うときに気をつけるべきことは、建物の維持費がいつ・どのくらいかかるのか正確に見積もることです。
イニシャルコスト(初期費用)の比較に意識が行きがちですが、維持費や建物寿命を考慮したら実は高くつくこともありえます。イニシャルコストに維持費を含めたものを予算として考えましょう。
建物の維持費の他、教育費や自動車の買い替えなどの準備も必要です。これらを含めて家計のやりくりが可能であるかどうかは、FPへの相談が必須です。ただし家計分析の専門家で、建材など建築にもある程度の知識がある人物かどうかが重要です。
長岡理知
長岡FP事務所
代表