知られざる老人ホームの費用…知らずに予算オーバーの場合も
老後を見据えた貯蓄。そのときに多くの人が見落としがちなのが、年を重ねるにつれて医療費や介護費がかさむようになるということ。実際に「老後XX万円不足する」といったシミュレーションは健康が前提で、万が一のことは想定されていません。
厚生労働省『令和3年簡易生命表』によると、2021年の日本人の平均寿命は女性が87.57歳、男性が81.47歳。一方で健康寿命は2019年値で、女性は75.38歳、男性は72.68歳。単純計算9~12年ほどは、「健康とはいえない」状態で暮らしていかなければなりません。つまりプラスαを考えて貯蓄額を検討すると、より安心度が増すといえるのです。
ひと口に介護といっても、その度合いはさまざま。最初は在宅で……と考えるでしょうが、日常生活が困難になってくると、前述のように「家族に迷惑をかけたくない」という思いが強くなるでしょう。そして施設への老人ホームへの入居を検討することも。ただ老人ホームといっても無料というわけにはいきませんから、おおよその予算は知っておきたいものです。
老人ホームの費用は、大きく「一時入居金」と「月額費用」の2つ。一時入居金は終身利用する権利を取得する目的に対し支払うもの。最近は0円という施設も増えてきましたが、施設によってまちまち。高級な施設ともなると億超えといった施設も。また月額費用は「家賃」「管理費」「食費」「介護保険サービスの自己負担分」などが含まれ、多くが10万~30万円ほど。ただしこちらもピンキリで、月に数百万円というところも。自身のライフスタイルや予算に合わせて、色々と検討するといいでしょう。
ひとつ、老人ホームでトラブルになりがちなのが、月額費用の請求について。以前は表記がまちまちで「聞いていたのと全然違う!」というトラブルが頻発していました。そこで指導が入り、最近は誤解を招く表記は少なくなりましたが、それでも見落としなどが原因で、初回の月額費用の請求の際に「思っていたよりもすごく高い!」ということが珍しくありません。表記されている月額費用のなかには、食費は別途だったり、レクリエーション代は都度請求だったり、さまざま。そのあたりを見落としていると、初回の請求時に驚くはめになるわけです。
ほかにも予算オーバーになる理由として、「介護度が進行し自己負担額が多くなる」「自宅の売却を費用に充てるつもりが、売却がうまくいかない」などがあげられます。もし費用が払えなくなったら……本人が払えない場合は、身元引受人(連帯保証人)に請求されることになります。身元引受人は配偶者や子どもであることが一般的です。身元引受人も払えないとなると……いきなり強制退去ということではありません。
月額費用の滞納は、通常3~6ヵ月程度の猶予期間が設けられています。基本的に猶予期間が経過すると契約解除が予告され、その後に強制退去となります。その点も契約書に書いてあるはずなので、事前に確認しておくことが重要です。また老人ホームの費用が払えなくなったら、支払いが可能なホームに転居したり、生活保護を受けるという手も。介護が必要な人をいきなり路頭に放り出すということは通常はないので、その点は安心です。