首都圏の新築マンション販売価格が「平成バブル」を超えるなかでも、分譲マンションの需要は堅調です。理由のひとつに、いわゆる夫婦共稼ぎの「パワーカップル」の存在があります。しかし、FP事務所ストラットの代表である伊豫田誠氏は、「勝ち組だと思われるパワーカップルでも、ちょっとした判断ミスで生活苦に陥るケースがある」といいます。それはどういうことか、2組の相談者の事例をみていきましょう。
世帯年収1,400万円超のパワーカップル…「元銀行員の妻の偏見」で2,400万円を逃す大誤算 (※写真はイメージです/PIXTA)

大きな差が生まれた2組のパワーカップル

2年後、B夫妻から「主人も不動産投資を始めたい」と連絡を受けました。以前奥様が購入した2軒の不動産投資が順調なため、「ぜひ自分も」との思いから相談に来られたそうです。

 

旦那様は変わらず自動車関連企業に勤務。2年で昇進しており収入も安定しているため、無事にローンの審査に通り、4軒のワンルームマンションを購入。世帯での合計は6軒となり、その後マイホームも購入できました。

 

その後、A夫妻も3軒目の投資用マンションの購入ができないかと、以前購入した旦那様が相談に来ました。

 

しかし、2軒目購入後にマイホームを買っていたこともあり、残念ながら3軒目の融資を得ることが叶わず。しかも、奥様はすでに退職しているため、奥様が購入することもできず、3軒目の不動産投資は実現しませんでした。

 

この結果、B夫妻は合計6軒のワンルームマンションで総額1億8,000万円の投資となり、A夫妻は合計2軒のワンルームマンションで総額6,000万円の投資となりました

※ 都内駅近、入居率98%のワンルームマンション1軒約3,000万円を参考としています。

7年後…A夫妻の「拭いきれない後悔」

7年が経過すると、2組の資産形成状況にはより大きな差が開いていました。

 

両夫婦とも3人の子宝に恵まれ、幸福ながら大忙しの暮らし。食費をはじめ、医療費、教育費、旅費、生活雑費など想像以上に出費が多く、共稼ぎのころとは違い貯金を増やしていくことができない状況です。

 

そんななか不動産市場は、2013年4月から続く日銀の異次元金融緩和とその後のマイナス金利政策、また近年の材料費の高騰などが影響し、不動産相場は7年前と比べて約20%も値上がりしています。

 

両夫婦の購入したワンルームマンションも例外ではなく、7年経過後の不動産価格は購入時の10%増となりました。いままでの融資返済も進んでいるため、含み益は20%ほどとなります。

 

つまり、両夫婦の現状はこうです。

 

・A夫妻……資産額6,000万円×20%=1,200万円の含み益
・B夫妻……資産額1億8,000万円×20%=3,600万円の含み益

 

貯金がなかなか増やせない子育て世帯。不動産価格の上昇によりどちらも資産は増加したものの、似たような状況にあった両世帯の差は「2,400万円」と大きく開いてしまいました。