首都圏の新築マンション販売価格が「平成バブル」を超えるなかでも、分譲マンションの需要は堅調です。理由のひとつに、いわゆる夫婦共稼ぎの「パワーカップル」の存在があります。しかし、FP事務所ストラットの代表である伊豫田誠氏は、「勝ち組だと思われるパワーカップルでも、ちょっとした判断ミスで生活苦に陥るケースがある」といいます。それはどういうことか、2組の相談者の事例をみていきましょう。
世帯年収1,400万円超のパワーカップル…「元銀行員の妻の偏見」で2,400万円を逃す大誤算 (※写真はイメージです/PIXTA)

不動産投資セミナーに来場した2組のパワーカップル

7年ほど前、似たような世帯状況の2組の夫婦が弊社の「不動産投資セミナー」に参加されました。

 

いずれも夫婦ともに大手企業に勤務していて、世帯年収1,400万円を超えるいわゆる「パワーカップル」です。A夫妻はともに銀行勤め、B夫妻はともに自動車関連企業に勤めていました。

 

A夫妻は旦那様が、B夫妻は奥様が不動産投資に関心を持ち、それぞれパートナーを連れてセミナーに参加されたようです。

 

両夫婦ともに、参加のきっかけは「子育てや家事が忙しくなり、奥様が退職して家庭に専念したいと考えるようになった」ことです。奥様が退職したあとも一定の収入を確保するため不動産投資を検討したところ、もし不動産を購入するなら在職中でないと融資を受けられなくなってしまうため、「退職前に不動産投資を勉強したい」と考えたそうです。

 

また、両夫婦とも奥様の退職を前に1,000万円を貯めていたことから、退職後の生活に大きな不安がないことも不動産投資に興味を抱いた要因の1つでした。

 

一通り不動産投資セミナーを聞き終え、2組とも後日個別で面談。

 

その結果、2組の夫婦はそれぞれ下記のとおり投資を始めました。

 

【旦那様が不動産投資に関心を持っていたA夫妻】

夫…ワンルームマンションを2軒購入

妻…購入せず

 

【奥様が不動産投資に関心を持っていたB夫妻】

夫…購入せず

妻…ワンルームマンションを2軒購入

 

それぞれに理由を尋ねると、A夫妻の旦那様は「いまは銀行融資が受けやすく、金利が低い時期に不動産投資を行うのは理に適っている」、奥様は「不動産投資で大きな融資を受けるのは心配」、B夫妻の奥様は「在職中に銀行融資を活用して、不動産投資でレバレッジ効果を得たい」、旦那様はA奥様と同様「不動産投資で大きな融資を受けるのは心配」との考えでした。

 

そして間もなくして、両夫婦の奥様は退職して家事に専念されたようです。世帯としてみると、2組とも2軒のワンルームマンションへ投資している同じような状況のパワーカップルですが、ここから大きな差が生まれるのです。