【歯周病】高齢者ほどなりやすいのはなぜ?歯を失わないために知っておきたい事実(歯科医師が解説) (※写真はイメージです/PIXTA)

歯周病、ひいてはコロナ感染まで、予防における重要なキーワードは「炎症」です。サッカー通りみなみデンタルオフィス・橋村威慶院長が、歯周病と炎症の関係について解説します。

日本人の「歯を失う原因」第1位、歯周病

まさに国民病と言っていいほどの歯周病。歯周病は年齢とともに罹患率が上がっていきます。年齢層でみると65〜74歳代が一番高く、57.5%が罹患。若い25〜34歳代でも32.4%が歯周病になっています。

 

重症化(歯周ポケット5mm以上)の割合は65〜74歳代で43.3%、25〜34歳代でも9.6%です。罹患率が高いのに自覚症状(歯ぐきの痛みや腫れ、出血等)を有する割合は低く、65〜74歳代ではわずか10.4%、25〜34歳代で13.8%となっています。歯周病が静かなる病気と言われる所以です。

 

歯周病治療において最も重要なのは、歯周組織(歯の周りを支えている組織)の炎症をどう抑えるかにかかっています。今回は炎症と歯周病について述べます。

なぜ高齢になるほど罹患率が上がるのか?

そもそも歯周病はなぜ子供になく(まったくないわけではありません)、歳をとればとるほど増えるのはなぜでしょうか?

 

歯周病は歯周病菌によってもたらされる病気です。歯周病菌は複数あり、特に病原性が強い3菌種をレッドコンプレックスと言います。そのうち一番悪さをする菌をP.g菌と言います。

 

P.g菌は他の歯周病菌と同様に常在菌ですが、他の菌とは少し違った感染をします。以前はP.g菌も他の歯周病菌と一緒に出生時に感染すると考えられてきました。しかし2000年代に入った研究により、P.g菌は子供の時期はまだ感染しておらず、18歳前後から感染することがわかってきました。

 

感染したP.g菌は最初のうちはおとなしくしていますが、そのうち他の細菌と共存してプラークを作り、口腔内の汚れなどがきっかけでだんだん悪性化していきます。年齢が上がるほど病原性が高まる確率が増えていくのです。そして一度害を持つようになったP.g菌は、現在の医療では完全に取り除くことができません。ですが弱点もあります。この悪の親玉であるP.g菌、炎症がないと生きていけないのです。

歯周病悪化を防ぐには「いかに出血を抑えるか」が重要

■P.g菌は鉄が大好き

血液はヘムという鉄分を含んでいます。P.g菌はこのヘムを食料としています。またP.g菌は嫌気性細菌と言い、酸素があるところを嫌います。P.g菌にとっては酸素の少ない歯周ポケットが恰好のすみかです。

 

P.g菌は歯周ポケット内をすみかとして、バクテリアフィルムを形成し、その毒素が歯周組織に炎症をもたらします。さらにP.g菌そのものが傷の治りを悪くして、炎症している部位を悪化させ出血させます。そしてP.g菌はヘムを食料としてさらに炎症を拡大させます。この悪循環が続き重度の歯周病になっていきます。

 

歯周病を悪化させないためにはいかに歯周ポケット内の出血を防ぐかが重要となり、出血=炎症を抑えることとなります。

 

以前の記事でも述べましたが、この炎症拡大は、コロナウイルスと結びつくとさらに炎症の暴走(サイトカインストーム)を起こし、体内に重篤な影響をもたらします。

しかし、「患者さんに治療を始めてもらう」までが大変

歯周病が大変な病気であることはわかっていても、歯科医師から患者さんに伝えるのが難しい病気です。

 

歯周病の程度の診断をするためにはレントゲン検査、歯周ポケット検査、歯肉の状態、噛み合わせなどを総合的に歯科医師が判断します。検査の結果、Ⅰ〜Ⅳ段階に分けて歯周病の程度を決めていきます。その際、患者さんが実感できるのは歯周ポケットの値ぐらいでしょうか、あとはピンとこない場合が多くあります。

 

歯肉の色が悪いと言われても、他人と歯肉の色を比べてみている人はほとんどいないでしょう。レントゲンも、あの白黒の像で説明を受けてもわかりにくいものです。噛み合わせや、その他の所見も似たり寄ったりです。

 

歯周ポケットについても、たとえば「あなたの右奥の2番目の歯に5mmの歯周ポケットがあります」と説明されても、患者さんからすれば普段は何も支障がなく、治療をしないといけないことはわかっていても、すぐに手遅れになるというわけではありません。患者さんへのインセンティブとしては不足です。私自身も軽度の歯周炎を持った患者さんへの説明には大変苦労していますし、歯周治療に消極的な患者さんはそのまま治療につながらないケースが多々あります。

患者さんにとって「もっとわかりやすい検査」がある

■目に見える指標、「PISA検診」と「PCR検査」

私は、特定健康診査(メタボ健診)のようにわかりやすい数値があれば、患者さんも歯周病治療に対してより積極的になるのではないかと考えています。実は歯周ポケット検査以外に、数値としてわかる検査法が2つあります。

 

1つがPISA検診です。2008年に国際臨床歯周病雑誌に発表された、炎症面積を平方mm単位で計算する方法です。歯周ポケット検査でも炎症している部位(検査して出血したところ)はわかりますが、出血の有無だけで数値としては出ません。PISA値は炎症面積の具体的な数値が出ますから理解しやすく、また、再検査をしたときは容易に比較ができる利点もあります。なお中等度以上の歯周病の場合、炎症面積は合わせると手のひらほどにもなります。手のひらサイズの炎症が常に身体にあるのは恐いですね。

 

もう1つの検査はPCR検査です。PCR検査はコロナウイルス判定キットによりすっかり有名となりました。ご存じの通り精度が高く、また複数の菌種を同時に測定できるため、P.g菌を含むレッドコンプレックスがどのくらいいるのかを一度の検査で把握することができます。最近では即日判定検出装置も出てきています。この検査は患者さんにとって有用な情報になるだけでなく、どのような歯周病治療法をするかの判断材料としても有益です。次回は歯周病の治療方法について解説します。

 

 

橋村 威慶

サッカー通りみなみデンタルオフィス 院長

 

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    サッカー通りみなみデンタルオフィス 院長 

    【経歴】
    1998年3月 鹿児島大学歯学部 卒業。
    2002年3月 すなまち北歯科クリニック 開設。
    2014年2月~2016年3月 東京大学医科学研究所 客員研究員。
    2019年5月 サッカー通りみなみデンタルオフィス 開設。
    2019年6月 特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。

    【所属学会など】
    日本抗加齢医学会 専門医
    日本歯周病学会
    日本補綴歯科学会
    日本アンチエイジング歯科学会

    【サッカー通りみなみデンタルオフィスHP:https://www.minamidental-office.com/

    著者紹介

    医療と社会の間に生じる諸問題をガバナンスという視点から研究し、その成果を社会に発信していく特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」による学会。「官でない公」を体現する次世代の研究者の育成を目的とし、全国の医療従事者が会員として名を連ねている。

    著者紹介

    連載現役医師が解説!様々な「カラダの不調」への対処法

    ※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。

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