(※写真はイメージです/PIXTA)

かつては「診療報酬のうまみが少ない」とないがしろにされ、人員不足等による劣悪な労働環境から自殺や過労死する医師も出るなど、「激務・薄給の代名詞」として医学部生から敬遠されていた小児科医。しかし、診療報酬の改定や「コロナ特需」により、いまや日給40万円、50万円など破格の待遇も散見されると、高座渋谷つばさクリニック院長の武井智昭先生はいいます。普段なかなか知ることのできない「医師のおカネ事情」について、詳しくみていきましょう。

2020年の新型コロナウイルス感染後の大幅な変遷

ところが、2020年の新型コロナウイルス感染症大流行により、受診控えが進みました。その筆頭候補が、小児科・耳鼻咽喉科でした。

 

これにより小児患者受診が激減したため、医師報酬は一時的に大幅減少。日中の非常勤勤務では時給3,000円、休日では時給5,000円とありえない額にまで低下しました。

 

2021年になると、小児患者でも新型コロナウイルス感染例が増加してきました。診療報酬においても、発熱患者ではトリアージ加算(3,000円相当)、2類感染症入院加算(2,500円相当)、また、診療日当日に新型コロナウイルス感染と抗原検査で判明した場合には救急医療管理加算(9,500円)が算定できるよう改定されました。

 

発熱患者はこれまで、診療所に行く際の予約は不要でしたが、新型コロナウイルス感染症の時代となるとそうはいきません。発熱患者は予約して受診・検査をするという風潮となり、受診数の抑制をせざるを得ず、2022年のオミクロン株の大流行においては、再び小児発熱患者が受診できなくなる事態になりました。

 

ところが、前述の報酬加算からすると、小児患者が休日にコロナ抗原検査を行い陽性と判明されると、小児科外来診療料(599点)、休日加算(365点)、地域連携小児夜間・休日診療加算(450点)、院内トリアージ加算(300点)、2類感染症患者入院診療加算(250点)、コロナ抗原検査(300点)、救急医療管理加算(950点)となり、合計3,214点以上(32,140円以上)となります。

 

同時に、2022年からは新型コロナウイルスワクチン接種が拡大し、多種多様な予防接種の取り扱いに慣れており、接遇に優れている小児科医は現場で重宝されました。このため、小児科医は希少価値が高まり、ワクチン案件や小児救急現場では医師の奪い合いが発生。集団接種の現場でも、小児救急外来の現場でも大幅な報酬改善が行われました。

 

一時は時給20,000円程度、あるいは地域によってはそれ以上の報酬算定が日常茶飯事となり、小児科医時給の高騰化はオミクロン株感染のピークと同じような挙動でしたが、現在は小康状態となっています。

 

筆者が目撃した案件のうち、小児コロナワクチン(5歳~11歳)では、東京多摩地区:日額40万円(7時間)、東北地方:日額50万円(8時間)という破格な案件も散見されました。

 

20年前には「小児科はどんな時代になっても、子どもを大事にする風潮は至極当たり前。しっかりと研修をして、人間的にも医療者としても優秀で1人前になれば、食っていけないことはないぞ」という勧誘の文言がありましたが、このようなマーケットの過熱・報酬の高騰化となることは予言できていなかったのではないでしょうか。

 

 

武井 智昭

高座渋谷つばさクリニック

院長