老後、いくら貯蓄があればいいのか……よく議論される老後資金問題。必要額は夫婦で800万円あればいいとか、2,000万円はほしい、さらには余裕ある暮らしを望むなら5,000万円が最低ラインなど、さまざまな意見を耳にします。ただこれらの試算をただ鵜呑みにすると、老後、困窮することは火を見るより明らか。みていきましょう。
老後2,000万円は必要、いや800万円あれば大丈夫…老後資金論争、鵜呑みにした老夫婦が困窮するワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

老後30年間、夫婦で健康で暮らすは可能か?

老後資金を考える際に用いられることの多い家計調査は、調査年によって結果は変わるので、「老後は2,000万円足りない」「いや800万円あれば十分だ」などということを、絶対的なものとして言うことはできません。

 

さらにあくまでも試算は「夫65歳以上、妻60歳以上の無職世帯」の平均値であり、「30年間、夫婦ともに健康で暮らしたなら」ということを前提に単純計算したもの。実際に30年間病気知らずでその後亡くなる……そんな人生は相当稀な話でしょう。

 

このような背景があるにも関わらず、ただ「老後2,000万円あれば大丈夫」「800万円あればいいらしい」と、自身に置き換えて考えずにいると、思わぬ出費で慌てることになります。老後に考えられる、想定外の出費としては、大きく2つあります。

 

老後の思わぬ出費① 自宅の修繕費

日本人の持ち家率は、70代以上になると8~9割に達します。我が家を終の棲家と考えるのであれば、年金生活をスタートさせる前にバリアフリーにするなど、リフォームを考えることになるでしょう。

 

ではそれだけで十分なのかといえば、そういうわけにはいきません。一戸建てであれば10年~15年ほどで屋根や外壁の修繕は必須ですし、台風や地震などで想定外の修繕が発生する場合も。高齢でローンを組むのは少々ハードルが高いですから、現金で対応するのが一般的です。

 

老後の思わぬ出費② 治療費や介護費

前出の老後の資産は、あくまでも夫婦二人とも「健康」であることが前提です。厚生労働省『簡易生命表』によると、2019年男性の平均寿命81.41歳に対し、健康寿命は72.68歳。女性の平均寿命87.45歳に対し、健康寿命は75.38歳。単純計算ですが、男性は8.79年、女性にいたっては12.19年、何かしら健康面で支障を抱えながら生きていくことになります。

 

当然、医療費はかさむことになりますし、介護が必要になる人もいるでしょう。その分、支出増は避けられません。さらに自宅では対応できなくなり、施設に入居というケースも。これらすべてを「想定内」で対応するのは難しく、プラスαの支出を覚悟しておかなければなりません。

 

 

——老後いくら必要か

 

さまざまな試算で色々と言われていますが、あくまでもそれは統計調査をもとに単純計算したもの。モデルケースのように人生歩めるかは未知数です。

 

老後は特に健康面で不測の事態に陥りやすく、思わぬ出費に見舞われるケースも。試算をただ鵜呑みにすれば、思わぬ出費で困窮する可能性は高いでしょう。あくまでも試算は参考程度にして、自身であればどれくらいの準備が必要か、検討を重ねることが、老後を見据えた資産形成の第一歩になります。